2012年11月2日金曜日

第439話 こもれびの小径 (その2) 動物園こそわが楽園 Vol.4

上野動物園はこもれびの小径のそば、
番(つがい)のナベヅルと
1羽のアオサギが同居する檻の前にいる。
本来、鳥は籠の中に居るもの。
でも、ここは相当デッカくて籠というより檻なんだ。

それにしても奇妙な同居じゃなかろうか。
動物園当局にその理由を訊いてみたいが
変人扱いされるのがオチだからやめておく。
ただ、このまま立ち去る気になれず、しばし観察を決め込んだ。

ナベヅルの番はきっとシアワセだろう。
単身のアオサギはたぶん淋しかろう。
脳裏をかすめるのは
小林旭があのカン高い声で歌った「サーカスの唄」である。
 
  ♪ 檻のアオサギ 淋しかないか
    おれもさみしい 独り身暮らし
    ハシゴがえりで 今夜も暮れて
    知らぬ酒場の 花を見た  ♪

ナベヅルは仲むつまじく、
ときおりくちばしを交えたりもしている。
あらら片方が水浴びを始めたヨ

バシャバシャやってるのはおそらくメスだろう。
何で区別がつくんだ! ってか?
これが判るんだな、われわれクラスになりますと―。

概してちょっかい出すのはオスのほうでメスは基本的に受け身。
生きとし生けるもの、みなそうであろうヨ。
ところがこの自然の摂理に逆らうのが万物の霊長、いわゆる人間様だ。
殊に近ごろの日本娘に摂理もへったくれもあったもんじゃない。
欲しいと思ったら、それこそ恥も外聞もなく力ずくで獲りにいくからネ。
まっ、今んとこみんながみんなじゃないからいいけどサ。

水ぎわでたわむれるナベヅルをよそに
高いところの止まり木にアオサギ1羽止まりけり。
淋しそうな様子まったくなく笑ってやがる

われ関せず・・・達観した孤高の姿をぜひ見習いたい。
園内を観回っていて判ったことに、鳥には獣にない潔さを感じる。
連中は哺乳類を見下してるのかもしれない。
何たって彼らは空を飛べるからねェ。
地震だろうが、津波だろうが、巻き込まれる心配ないもんなァ。

   ♪ ああ 人はむかしむかし
    鳥だったのかも しれないね
    こんなにも こんなにも 空が恋しい ♪
            (作詞:中島みゆき)

さりとて今さら鳥に生まれ変わりたくはない。
恥ずかしながら高所恐怖症だからネ。
もっとも鳥になったら、高いとこなんか全然コワくないのだろうが・・・。