2012年11月9日金曜日

第444話 突然の花束贈呈 (その2)

湯島のとんかつ屋「井泉本店」の2階にいる。
湯島といっても上野広小路に近く、最寄りも同名駅だ。
ちなみに上野は台東区、湯島は文京区で
「井泉本店」が上野の”とんかつ御三家”からもれたのは
このあたりに理由があるかもしれない。
地番が上野だったら
”とんかつ四天王”の一翼を担ったのではないか。

店のパンフレットにはこうあった。

=井泉の由来=

昭和5年、上野の地に根を下ろし、
初代の雅号より、
〔井泉〕(セイセン)と名付けましたが、
いつの間にか、イセンの名で
皆様から親しまれるようになりました。

こうもある。

=かつサンド発祥の店=

初代女将は明治生まれながら
朝食はトーストに紅茶でしたので
パンが身近にある食生活でした。
初代が作ったとんかつを見て
これをパンにはさんだらどうだろう?
とひょいと思い付き、
日本初かつサンドが誕生致しました。

日本人に広く愛される
かつサンドを考案した功績は大きい。

当夜、かつサンドをオーダーしなかったのは
サンドイッチなる食べものが
立食パーティーならまだしも
畳の上の宴会にそぐわないからだ。

さて、引き続き宴席の実況中継である。
料理が揚げもの主体となると、
最初のうちは活発だった箸の上げ下げが
次第にペースダウンしてくる。
しかも若者ゼロだから
1切れずつ残りがちな”遠慮のかたまり”を
さらってくれるスイーパーがいない。
ごはんと味噌椀を所望するものとてなく、
二次会に流れることにする。

会場はすぐ隣りの「ファンタジスタ」なるピッツェリア。
料理長は日本のピッツァ職人No1で
ナポリで行われる世界大会の日本代表とのこと。

北イタリアのランゲ・ネッビオーロで再び乾杯。
当日はさだお御大のバースデイだった。
傍らの花束が香りを放っている。

定番のマルゲリータともう1種、
熟年マドンナのM泉サンが選んだピッツァは
何だったっけな? マリナーラだったかな?
各自計2切れずついただくと、
なるほど日本王者の名にふさわしい焼き上がり。
一同、笑みをこぼしながらの会話にも弾みがついた。

さだお先輩、これからも命ある限り、
漫画を、エッセイを書き続けてください。

「井泉本店」
 東京都文京区湯島3-40-3
 03-3834-2908

「ファンタジスタ」
 東京都文京区湯島3-40-11
 03-5817-4499