2012年11月7日水曜日

第442話 メニューの値段に目が釘づけ (その2)

銀幕に見るメニューのハナシである。
2本目の映画は「喜劇 駅前団地」。
J.C.が注目したのは「高砂亭」なる小料理屋の立て看板だ。
ビールが140円

当時、中瓶は存在しないからビールは大瓶に決まっている。
現在、このクラスの店なら安くて700円、高くても850円程度か。
ビールは半世紀で5~6倍に値上がりしたことになる。
一級酒と二級酒の値段もほぼビールと連動している。

★3本目・・・「配達されない三通の手紙」(1979 野村芳太郎)

よく出来たミステリーだった。
原作はエラリー・クイーンの「Calamity Town (災危の街)」。
冒頭の音楽、E・グリークの「ホルベルグ組曲 (アリア)」が
実に効果的だ。

とにかく女優陣は百花繚乱。
栗原小巻、松坂慶子、小川真由美、竹下景子、神崎愛、乙羽信子、
スゴいねェ、たまらんねェ。
大好きなマユマユも出てるしィ・・・。
(こういう言い方、自分で言ってて気持ちわりィんだよな)
ならやめろ! ってか? へっ、ごもっとも!

舞台は山口県・萩市。
街をゆく片岡孝夫(現15代目仁左衛門)の背後に映った、
食堂の定食メニューはかくの如し。

 すき焼き・・・600円  天ぷら・・・500円  カツ・・・450円  
 ハンバーグ・・・450円  新川・・・450円

1979年の作品だから
33年を経て物価は倍程度にしか上がっていない。
ただし、東京と萩の価格差はあろう。
それよりも気になったのは新川定食である。
調べてみると、新川は萩漁港に隣接する地区で
姥倉運河の白魚(しろうお)漁は冬の風物詩とのこと。
想像するに新川定食は魚介系ではなかろうか。
刺身にしちゃ安すぎるから煮魚か焼き魚の可能性が高い。
あるいは魚介に食材を求めた日替わりとか・・・。

★4本目・・・「居酒屋兆治」(1983 降旗康男)

主演は高倉健、舞台は函館。
健さんが店主の居酒屋「兆治」で池部良が飲んでいる。
この二人は何かと共演の多い間柄だ。
カメラがとらえた壁の品書きを列挙してみよう。

 もつ焼―かしら・しろ・ればぁ・たん・はつ・がつ・
       こぶくろ・・・各70円 なんこつ・・・80円
 冷奴・・・200円  自家製らっきょう・・・250円  
 煮込280円  すだこ・じゃがバター・・・各300円
 ほっけ・ほたて貝柱・・・各400円  いか丸焼き・・・450円
 ビール・・・450円  お酒・・・300円

どうだろう、29年前としてはそんなに安くないような気がする。
この間のインフレ率は30%といったところか。

ところで高倉健の元恋人役を演じた大原麗子。
3年前に不幸な亡くなり方をしたが訃報を聞いたとき、
劇中の彼女の末期(まつご)とダブッてしょうがなかった。
「居酒屋兆治」を観た人なら誰しもが
ドラマと現実の交錯を心のうちに感じたのではなかろうか。
笑顔と声音の可愛い女優さんだったなァ。