2012年11月30日金曜日

第459話 昔恋しい高砂の町 (その3)

何だ、高砂はまだ=つづく=のか? ってか?
ええ、でも今回で終わりますから
今しばらくのご辛抱を!

8年前、高砂に2軒の店を訪ねたが
駅前の小料理屋「T」はすでにない。
ひょっとすると屋号を変えただけで
女将も料理もそのままかもしれないけれど・・・。
線路の反対側のスナック「M」はどうなったかな?
実はあれ以来、再訪していないのだ。
何となくああいうのは一夜限りがよいのでは? 
と思いましてネ。

バック・トゥー・ザ・プレゼンスの2012年秋。
M鷹サンと高砂駅で落ち合い、
いかにもベタな店名の「トリス酒場」を目指した。
町の評判はいい店らしいが金町の「ブウちゃん」しかりで
葛飾の経営者はあまり名前にこだわらないらしい。
フーテンの寅さんが帰る柴又の団子屋も「とらや」だもんな。

酒場の止まり木に二羽の夕雀が止まった。
ビールはハートランドの中瓶、これで乾杯する。
突き出しは牛もつ煮、だしぬけにもつ煮込みは珍しい。
M鷹サンが野菜のピクルスを注文した。
野菜と食酢でダブル・ヘルシーな一品だ。

芋焼酎・三岳のロックに切替え、スモーク盛合わせを追加。
ししゃも・サラミ・チーズ・ゆで玉子・さつま揚げの陣容は
可も不可もナシといったところか。
トリスのハイボールが20時まで1杯190円だという。
ウイスキーをあまり好まないのと、さすがにトリスはなァ・・・
そんな気持ちが入り混じったものの、
ダメ元でいっときましょうヨ、相方と合意にいたる。
結果は・・・、ハイ、お察しの通りでありました。

2軒目もあらかじめ目星をつけておいた「たかだ」。
居酒屋というか洋食屋というか、まあ、そんな店だ。
口直しにサッポロの生ビールを流し込む。
お通し代わりにスルメイカとホタテの刺身がきた。
マグロや白身と違い、
こういうものは店によってそれほどの差が出ない。
下調べでは人気だった具だくさんの五目せいろを一人前注文。
J.C.とは逆にM鷹サンは飲むよりも食べるほう。
素直に情報に従ってくれたのだった。

運ばれた五目せいろは五目を名乗るだけあり、
海老やら蟹やらいくらやら、滅多やたらに盛込まれている。
盛込まれてはいるが、見るからに素人仕事で垢抜けない。
家庭の主婦でも料理上手ならもうちょっと小粋に器を彩るハズ。
おすそ分けの蟹をつまむと、
解凍を失敗してスカスカじゃないか!
われら顔を見合わせたきり、しばし会話が途切れる。
昔恋しい町なれど、今おいしい町ではなかった高砂、
面目丸つぶれの苦い一夜であった。

=おしまい=

「トリス酒場」
 東京都葛飾区高砂8-12-14
 03-5660-5454

「たかだ」
 東京都葛飾区高砂8-26-1
 03-5699-1531