2013年1月3日木曜日

第483話 2匹のブルドッグ (その1)

普段は疎遠な知人に立て続けにバッタリ会ったり、
似たような現象が連続して起こったり、
そういうことってありますよネ?
あれはいったい何なんでしょうか、いや、不思議です。
この秋、J.C.の身にもそんなことがありました。

何と、2匹のブルドッグに続けて襲われたんざんす。
腕は引っかかれるわ、脚は咬まれるわでもう流血の大惨事、
危うく病院に担ぎ込まれるところでありました。
というのは悪い冗談(すみませぬ)で
実は2軒の「ブルドック」を続けて訪問したのです。

1軒目は品川区に残る唯一の迷宮、大井町東小路。
西新宿の思い出横丁をコンパクトにした感じで
葛飾・立石に似てないこともない。
終戦直後(生まれちゃいませんが)の闇市を偲ばせる、
この雰囲気がとても好きなんですなァ。
名店にして迷店の大衆酒場「大山」が
突然、閉業しちまったのはショックだったが
まだまだ捨てがたいラビリンスがここにある。

やって来たのは洋食店「ブルドック」。
なぜか「ブルドッグ」ではなくて「ブルドック」なのだ。
ホットドッグ、ソルティードッグ、ハウンドドッグ、
みんなドッグと発音するのにブルドッグだけはブルドック、
つくづく日本人の英語はおかしい。
これはひとえにウスターやとんかつソースの一大メーカー、
ブルドックがもたらした悪習でありましょう。
悪習と糾弾するほどではないにせよ、
あの会社が言い出しっぺであることに間違いはあるまいて。

当夜の相方はニューヨーク時代の友人・S瀬クン。
当ブログをたまたま見てレンラクをくれたのだ。
キリンの生ビールをお替わりしながら
思い出話に”花咲か爺さん”の巻である。
旧友との邂逅、そして酒交ほど楽しいことはない。

お互いにカキ好きにつき、
オーダーしたのはカキフライとカキグラタン。
この店の名代はバカデカいオムライスとメンチカツだが
個人的にはカキの二段攻めをオススメしたい。

カキフライはそれ自体もさることながら
付合わせのポテサラとキャベツがバツのグン。
殊にしどけない千切りキャベツは都内屈指のしなやかさで
浅草のとんかつ屋「ゆたか」と双璧だ。

カキグラタンはほうれん草入りのフロランタン風。
フロランタンはもともと舌平目を使用するフランス料理である。
ほうれん草とクリームで仕上げるフローレンス(フィレンツェ)風のこと。
グラタンの表面のカリカリを崩すと中はスープがたっぷり。
ちょいとしたオイスターチャウダーですな、これは。

瀬戸内では広島だけでなく、
岡山や兵庫でもカキの養殖が盛んになったそうだ。
岡山出身のS瀬クンの話を聴くうちに
いつしか夜は更けてラストオーダーの時間と相成りました。

=つづく=

「ブルドック」
 東京都品川区東大井5-4-13
 :03-3471-6709