2013年1月18日金曜日

第494話 渚がシンデマッタ

 ♪ ここかと思えば またまたあちら 浮気なひとね
   サーフィンボード 小わきにかかえ 美女から美女へ
   ビキニがとっても お似合ですと 肩など抱いて
   ちょいとおにいさん なれなれしいわ     ♪
                  (作詞:阿久悠)

ピンク・レディのシングル第4弾、
「渚のシンドバッド」は1977年6月のリリース。
この曲とジュリーの「勝手にしやがれ」を合体させて
志村けんが破天荒なギャグに仕立てたのが「勝手にシンドバッド」。
そこから発想を得てそのちょうど1年後、
同名曲を引っさげ、デビューしたのがサザンオールスターズだ。

ピンクともサザンとも関係なく、
映画監督・渚がシンデマッタ。
勝手にシンデマッタ。

彼の映画を初めて観たのは1968年頃だった。
池袋の文芸座か文芸地下で
「青春残酷物語」と「日本の夜と霧」の2本を観た。
ともに1960年の作である。
そしてこの2本が彼の作品中、My Best 1&2になった。
「青春~」ではヒロイン・桑野みゆきのスッと伸びたうなじが
どこかヘプバーンのそれを思わせてまぶしかった。
ついでにBest 3は「愛のコリーダ」(1976)にしておきたい。

篠田正浩・吉田喜重とともに
松竹ヌーベルバーグの旗手として脚光を浴びた大島渚。
三人の監督に共通しているのは
いずれも当時のトップ女優をかっさらって女房にしていること。
自分とこの商品に手をつけちゃってるんだねェ、やれ、やれ。
会社もたまったもんじゃないや。

ジャン=リュック・ゴダールは世界初のヌーベルバーグ作品を
「青春残酷物語」としているが、はたしてそうだろうか。
石原裕次郎曰く、
「松竹のヌーベルバーグっていったって
 『狂った果実』のほうがずっと早いぜ!」
ここは裕次郎に1票であろう。
慎太郎原作の「狂った果実」は1956年の作、監督は中平康である。

1995年頃、ニューヨークで
まだ元気だった大島監督とお話しする機会に恵まれた。
「青春残酷物語」と「愛のコリーダ」が上映された、
Japan Society 主催の映画会後のパーティー席上だった。

J.C.が訊ねた質問は二つ。

「監督のご存命中に日本国内で
 『愛のコリーダ』のノーカット版が上映されると思われますか?」
「ハハハッ、無理だろうねェ、まず無理ですヨ」

「主役の松田英子サンは今どうしてらっしゃいますか?」
「2~3年前に電車の中でバッタリ会ったんだけどネ、
 ちょっと言葉を交わしたが元気そうだった。
 映画界に未練はまったくない様子でしたネ」

どうぞ、天国でも激情路線を突っ走ってください!