2013年1月21日月曜日

第495話 あの駅弁が食べたくなって

気に入りの駅弁が急に食べたくなって静岡へ。
もっとも駅弁ひとつ買うのに180キロも移動するバカはいない。
自分で自分をバカなヤツだと思うことがよくあるが
そこまでのバカではないつもりでいる。
したがって静岡駅に到着後、
改札を抜けたら真っ直ぐに大衆酒場「多可能」へ足を向けた。

まだ浅い時間につき、店内はガラガラのガラ。
独り身なのでカウンターに案内された。
ビールはアサヒの大瓶、突き出しはゆでた南京豆。
品書きに皮はぎの唐揚げを見つけ、即お願いする。
小ぶりの可愛いヤツが3匹、丸揚げにされて運ばれた。
淡白な中にも繊細な旨みの凝縮が感じられる。

しばしくつろいで萩錦の熱燗とまぐろのすき身を追加した。
市内・駿河区にある萩錦酒造は明治9年創業の蔵元。
その本醸造酒を初めて口にしたが
地元ではポピュラーな銘柄であるらしい。

滞在時間1時間ほどでお勘定。
目当ての駅弁を調達に向かう。
目指すはその名も「東海軒」だ。
当ブログ「生きる歓び」の前身、「食べる歓び」でも紹介した。
2006年9月にアップした稿を引用してみたい。

前日、静岡駅に到着したときにホームから見た
大きな看板に惹かれるものがあった。
「東海軒」とは中華料理か?洋食か?
はたまた駅前にありがちな「何でも屋食堂」なのか?
店先に立って胸がときめいた。
なんとまぁ、レトロでローカルな弁当屋さんだこと。
多種多彩な駅弁に欣喜雀躍、即座に決断。
今夜の晩メシに買い求めよう。
いやいや、帰りの新幹線でこれを肴に缶ビールだ。

名代は元祖鯛めしと聞くが、鯛めしではつまみにならない。
みかんの皮の炊き込みごはんにも後ろ髪を引かれつつ、
幕の内弁当に白羽の矢を立てた。
色とりどりのおかずに弱いのだ。
多色刷りの包装紙も食欲を煽り立てる。
この掛け紙がすばらしい!

車内で紐解くと何やら懐かしい香りが立ち上る。
弁当の内容は

海老フライ・チキンかつ・さば塩焼き・肉団子・玉子焼き・
かまぼこ・わさび漬け・山菜漬け・梅干し・ごま振りごはん

いいですねぇ、こういうのって―。
懐かしの香りのみなもとは揚げものに違いない。
小学校に上がる直前、
故あって長野―上野間を列車で往復したあの頃。
駅弁は子どもにとって大のご馳走だった
あの味がそのまま変わらず、静岡に生きていた。
柄にもなく目がしらが熱くなったのも無理はない。
しまいにゃ涙まで・・・。
おっと、それはわさび漬けが効いたのでした。 

駅北口にあったレトロな店舗はなくなったが駅構内で買える。
種類は限られるものの、ホームでも買えます。

「多可能」
 静岡県静岡市葵区紺屋町5-4
 054-251-0131

「東海軒」
 JR静岡駅構内改札前
 054-253-5171