2013年4月5日金曜日

第549話 風さそう 花よりもなお・・・ (その3)

昨日4月4日は「あんぱんの日」だった。
たまたま近所のスーパーで珍しさに惹かれて買った、
桜あん入りあんぱんの包み紙で知った。
日本記念日協会(こんなのあったの?)に
登録済みのレッキとした記念日と明記されてもいた。

ときは1875年4月4日。
明治天皇が花見のため茨城県・水戸に行幸の際、
侍従であった山岡鉄舟の発案によって
初代・木村屋店主、木村安兵衛がお出ししたのがあんぱん。
明治天皇が丸ごとかぶりついたのか、
ナイフ・フォークを駆使して召し上がられたのか、
定かではないけれど、
とにかくそれが昨日J.C.が買い求めた桜あんぱんだった。

ぱんをパックリ割ってみると、中には薄紅色の餡。
桜葉が混入されており、包みには”伊豆産「刻み桜葉」使用”とあった。
食べてみると、季節限定商品としての風情はあるものの、
通常のあんぱんのほうがおいしい。

明治天皇が初めて桜あんぱんを食べた4年後の同日。
琉球藩が廃されると同時に沖縄県が生まれ、
この日は「沖縄誕生の日」と定められてもいる。

おっと、こちらも花見のつづきであった。
地下鉄で浅草にやって来たわれわれ。
お花はもうじゅうぶんじゃないの、とばかり、
大川べりの並木を一べつしただけで落ち着く場所の物色に励む。

秋の夜はつるべ落とし。
春の夜の気温もまた、つるべ落とし。
桜花の季節も宵闇せまれば、急激に冷え込んでくる。
鍋でも囲んで燗酒といきたくなるのが人情だ。

赴いたのはすし屋通りの大衆酒場「三岩」。
ここはエンコの隠れた庶民の憩いの場。
浅草の伝統を引き継いで鍋も鮨も天ぷらもフライも供する。
いわゆるナンデモ和食の店なのだ。

温かい店内にいると、さっきは燗酒を欲したカラスがコロリと変身、
お願いしたのはビールの大瓶だ。
浅草はアサヒのお膝元、銘柄は当然スーパードライ。
と、ここまで書いて急にビールが飲みたくなった。
ちょいと筆を休めて冷蔵庫へひとっ走り。
といっても走るほど広いウチじゃないがネ。

プッファ~! こりゃ、たまらんわ。
あいや、失礼! 急いで先へ。

まずは必食の一鉢、にしん酢を所望する。
するとオバちゃん、口ん中でモゴモゴ。
「ん? 何だって? エッ、売切れってか?」―
それはないぜ、ババリータ!

=つづく=