2013年4月30日火曜日

第566話 想い出のスクリーン (その1)

 ♪ 赤く赤く ああ 燃える炎に
   あなたの横顔が 浮かんで消えた
   遠く遠く ああ せつない程に
   目を閉じればいつか 想い出のスクリーン
   愛しているのなら 愛していると
   言葉にすれば よかった
   少し素直な私を
   もう一度 Um 見つめて     ♪
           (作詞:三浦徳子)

八神純子を覚えていますか?
デビュー曲は「思い出は美しすぎて」。
大ヒットしたのは「みずいろの雨」と「パープルタウン」だ。

披露した歌詞は「想い出のスクリーン」の一番。
日本女性のシンガーソングライターは
叙情に流される傾向にありがちだが
彼女はスケールの大きさを感じさせた。
日本を飛び出してイギリス人の音楽プロデューサーと家庭を作ったが
判るような気がする。

いきなり八神純子に登場願ったものの、今日のテーマは歌に非ず。
そう、”スクリーン”と題したのだから映画である。
最近、アトランダムに観た映画作品に
なつかしいシーンが次々と現れ、想い出にドップリと浸かってしまった。
ゆえに「想い出のスクリーン」、しばしおつき合いくだされ。

「勝利者」(日活=1957年)は石原裕次郎、黎明期の作品。
のちに夫人となる北原三枝も顔を出しているが
主役は三橋達也と南田洋子。
ただし、裕次郎のカッコよさの前で三橋はいまひとつ冴えない。
南田の美しさも完璧ながら北原の持つ存在感には欠ける。
三橋&南田にはない何かをすでに裕次郎&三枝は備えていたのだ。

映画の舞台は銀座。
三橋はボクサー上がりのナイトクラブ経営者。
自らの手でチャンピオンを育てる夢を捨てきれていない。
銀座の店の名前も「クラブ・チャンピオン」と、
力道山でも飲みに来そうな珍名だ。

この店で裕次郎が間抜けなドリンク・オーダーをやらかす。
何と注文したのは「ハイボールの水割り」だとサ。
ウイスキーを水で割るのが水割り、
ソーダで割ったらハイボールだから
ハイボールの水割りなんてありえへん。
若い裕次郎はともかくも監督や脚本家、
先輩の三橋まで揃って気がつかない・・・というより、
ハナからその程度の知識がないんだネ。

「長崎ブルース」(東映=1969年)は青江美奈の同名ヒット曲の映画化。
往時、連作された「夜の歌謡シリーズ」のひとつだ。
青江の歌声に乗って映画は新宿駅前で始まる。
カメラが東口から伊勢丹方面の街並みをしっかりととらえている。
学生運動華やかなりし頃、彼らに強く支持された「新宿の女」で
藤圭子が彗星の如く現れたのも同じ1969年だった。

=つづく=