2013年4月25日木曜日

第563話 迷ったときは日本そば (その2)

明治37年創業の日本そば屋、北千住の「柏屋」で
深くコウベを垂れた日から四日後のこと。
好天のその日は上野にいた。
北へ帰るのみともを上野駅に送ったあと、独り公園を散策していた。

上野公園に来たのだから動物園に寄らぬ手はない、
真っ直ぐに正門へ向かった。
すると門前で今まさに始まろうとする猿回しに遭遇。
若い女性があやつる猿の名は何てったっけな、
忘れちゃったがこのコンビ、けっこう笑わせてくれた。
じゅうぶん楽しんだのでご祝儀は野口英世を1枚はずんじまった。
500円以上奮発した観客には猿の写真の絵葉書を1枚くれた。

正門から入るとさすがに土曜日、人出はかなりのものがある。
パンダ舎には行列ができていた。
パンダの前に案内所があったのをこれ幸いに
以前から気になっていたことを訊ねてみた。

J.C.の質問はこうである。
「何年か前までペンギンの隣りにビーバーがいましたよネ」
3人の女性スタッフ、互いの顔を見合わせて何やらうなずき合っている。
年かさの女性が応えて曰く、
「数年前に死んでしまったんですヨ」
「何年くらい前でしょう?」
「今お調べしますから少々お待ちください」
「じゃあ一回りしてあとで寄りますネ」

15分後に戻って聞いたところによれば、
1匹のアメリカンビーバーが2008年6月に死亡して
以来、替わりのビーバーはやって来てないそうだ。
そう、そう、あのビーバーは狭い縄張りにもかかわらず、
ちゃんとダムを作って愛くるしく、子どもたちにも人気があった。

腕時計を見ると早くも正午前、昼めしの時間である。
東園からイソップ橋を渡って西園を抜け、池之端門を出た。
ここから北上すれば根津、南下すると湯島の町。
さて、進路をどちらに取るとしよう。
店の数では湯島に分があるが
根津には谷中と千駄木という強い味方が控えている。
この3エリアを総称して谷根千というくらいだからネ。

湯島だとインドカレーか支那そばだ。
天丼・かつ丼の旨い店もそれぞれにある。
根津となれば町の中華屋か豆腐料理店、
あるいはうどんの人気店が2軒も揃っている。

これといった決め手に欠けて、どうにも行く先が定まらぬ。
ぼんやりと四日前の北千住を思い出していた。
おっと、そうだ、そうでした、お誂え向きの一軒があるじゃないの。
しかも池之端門のすぐ近くに。
”灯台もと暗し”とはこのことであった。

=つづく