2013年4月26日金曜日

第564話 迷ったときは日本そば (その3)

上野動物園・池之端門を出て昼めしの算段。
根津にも湯島にも行かずに
手っ取り早く目的を遂げるに恰好の店を思いついた。
ものの1分も歩けばそのそば屋に着く。
まったくもって迷ったときには日本そばだ。

屋号は「新ふじ」。
”新”を冠していても創業は明治42年と百年以上も前。
四日前の「柏屋」が明治37年だから老舗に次ぐ老舗と相成った。

 ♪ チョコレートは 明治 ♪
 ♪ 日本そばも 明治 ♪

「新ふじ」には何度か来ている。
初訪問は三年前。
三階建ての立派な日本建築に只者ではない雰囲気が漂っていた。
それは今も変わらない。

コンパクトな店内は晩酌に打ってつけながら
店じまいが早いせいか、夜に訪れたことは一度もない。
昼に来て小丼とそばのランチセットをいただいている。
いか、もしくは海老の天丼に冷やかけか温かけのセットだ。
確か初回はかつ丼のセットだったな。

この日の注文もいか天丼と冷やかけ。
これが900円。
いか天丼といってもキスが1尾寄り添ってるし、ピーマンも1片。
冷やかけには揚げ玉がパラリと振られて
冷やし小だぬきの様相を呈している。
良心的な値付けは老舗の底力なのだろう。

セットにつき、新香(たくあん・きゅうり)と
サラダ(トマト・きゅうり・キャベツ)が付いている。
あまりうれしくはないけれど、野菜不足を補うにはいい。
つまみの役目も果たしてくれるから、つい頼んでしまうのがビールだ。
その日もご多分にもれずであった。

目の前の棚に小田原の蒲鉾メーカー「鈴廣」の小冊子を発見。
題して「板わさでつながる心と心 かまぼこ術」。
そういやあ、一度ここで板わさを所望したことがあったっけ。
かまぼこはともかくも粉わさびには落胆、哀しい思いをした。
残念ながら”心と心”はつながらなかった。

「鈴廣」といえば今は昔、東京オリンピックの年だから昭和39年。
舟木一夫の主演映画「君たちがいて僕がいた」では
この会社が大々的に取り上げられた。
舞台は小田原、実名で登場し、社屋や大看板がアップで映し出され、
何よりも舟木自身がここでバイトをしてるんだから
「鈴廣」のプロパガンダ映画と断じてもおかしくないな。
相手役の本間千代子が可愛かった。

冊子をパラパラめくると、飾り切りや彫り細工が美しく見ていて楽しい。
板わさの注文は見送ってビールをゆっくり味わいながら
いか天って海老天より好きかもしれないなァ・・・
ぼんやりと思いながら、のんびり独りめしの昼下がり。

=おしまい=

「新ふじ」
 東京都台東区池之端2-8-4
 03-3821-3913