2013年4月29日月曜日

第565話 これがガーリック・ヌーボー

本日はにんにくのハナシ。

1997年の秋も深まる頃、
15年に及んだ海外生活を終えて帰国した。
東京での仕事は決まっていたから、まずはねぐら探しだ。

隅田川の川っぺり、
さびれ果てた旧花街・柳橋の賃貸マンションを住まいとして
日本橋のオフィスに通うようになった。
浅草橋から秋葉原へJR総武線でひと駅、
JR山手線外回りに乗り換えて神田へひと駅、
たったふた駅ながらワン乗り換えのすし詰め電車である。

海外赴任の長かったビジネスマンが帰国するに当たり、
大きな恐怖感を抱くのは通勤時の満員電車じゃなかろうか。
案の定、ラッシュはかなりツラく1週間ほどでバスに切り替えた。
陽気のいい季節だと歩いたがドア・トゥー・ドアで25分ほどだった。

初めて電車通勤をした日。
乗り込んだ電車の混雑もさることながら車内の匂いにたじろいだ。
ヤケににんにく臭かったのだ。
ハハァ~、こいつは前夜に朝鮮焼肉を食った人間がかなりいるんだな、
即座に思い当たった。
1980年代から’90年代にかけて焼肉人気が沸騰したんだろうネ。
遠く日本を離れているあいだ、いつの間にか列島津々浦々、
老いも若きも半島の食文化に侵食されていたわけだ。

日本人はすき焼きやしゃぶしゃぶより焼肉を好むようになってしまった。
本場・韓国だと韓流すき焼きともいうべきブルコギが主流なのに
本邦のすき焼き屋は衰退の一途をたどるばかり、彼我の差は歴然だ。
牛肉は煮るより焼くほうが手っ取り早くて旨い。
しかも焼肉の場合、にんにく風味のタレが旨さに拍車をかける。
ビールにも白飯にも相性は抜群だからネ。

わが家でもにんにくはよく使う。
ステーキ・すき焼き・カレーには必須の薬味になっている。
肉だけでなく、かつおのタタキや〆さばなんかにも生にんにくの助けを借りる。

春まだ浅い時候だからずいぶん前になるが
みちのくは仙台の駅ビル地下でこんなモノを見つけた。
見るからに清純な若採りにんにく
まさにガーリック・ヌーボーである。
初めてお目に掛かった逸品を即買い求めて帰京し、
その夜、エシャレットやノビルを食べるように味噌を付けて生のままかじった。
口中にフレッシュなにんにくの風味が拡がったものの、
いや、辛いの辛くないのっ! とてもじゃないが生食はムリだった。

翌日、薄くスライスして和牛の切り落としと一緒にバターで炒めたが
通常のにんにくには望めぬ鮮烈な香りが卓上に漂い、
再会の機会があれば必買の一品と相成った。
女房とにんにくは若いのに限るということですな。

「S-Pal 仙台店」
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