2013年8月6日火曜日

第636話 魔がさして御徒町 (その2)

ランチタイム@御徒町。
さて、何をいただくとしましょうかの? 
頭の中をよぎったのは日本そばの「吉仙」と町の中華屋「民華」。
しかし、両店ともに昭和通りを渡らねばならない。
ちと億劫だ。
本格カレーの「デリー」と支那麺の「我流竹子」は
中央通りを越えなければいけない。
これも面倒くさい。
一番近いのはナンデモ屋の「御徒町食堂」だが
そこだとビールを抜いてのんびり長居をしてしまいそう。

ひらめいたのが豚かつ「まんぷく」。
アメ横のハズレの小店はカウンターのみ、ほんの数席しかない。
やや早めの時間帯につき、並ぶこともなかろう。
この時期だからかきフライはないけれど、
王道のロースカツでいったろうじゃないか。
昼めしに豚かつは少々重いが
なあに半ライスにすりゃあ、それで済むことヨ。

進路が確定したら足取りは軽い。
裏路地にひっそりとたたずむ店舗に到着すると、
出迎えてくれたのはなんと、「本日定休日」の札だった。
あちゃあ、マイッたな。
まっ、べつに豚かつに固執するわけじゃなし、
こうなりゃ一から出直しである。

界隈の路地を何本か行ったり来たり。
すると道の両サイドに同じ店名の鮨屋が2軒あった。
大衆的な「かっぱ寿司」だ。
あとで調べたら1号店と2号店だった。

バブル期以降、たとえそのバブルが弾けようとも
高額になった鮨屋の値段は元へ戻ることがない。
庶民が気軽に使える場所ではなくなった。
そこで見逃せないスポーツ中継があるときなど、
よくお世話になるのが持ち帰り専門店やデパ地下のにぎり鮨。
食卓に酒と折詰めを並べてテレビジョンに相対するわけだ。
中には下手な鮨屋よりレベルが高いところもある。
その際、専門店はすぐ調製してくれるからよいが
デパ地下の難点は”さび抜き”がきわめて少ないこと。
やはり真っ当な鮨は生わさびで食べたいものなのだ。

外食時は5回を1回に削ってでも美味しい鮨にめぐり逢いたい。
したがって回転寿司や大衆鮨店に入ることはまずない。
不味いカレーライスや中華そばは食えるが
不味い鮨だけは食えないからネ。
目の前の「かっぱ寿司」を外からのぞくとかなりの混雑ぶり。
これだけ客が入っているからにはさぞ安くて旨いに違いない。

この日は目当ての店にフラレて気が急いていたのだろう。
手っ取り早いところで手を打とうと思っていたフシがある。
魔がさすのはこんなときなんでしょうな。

=つづく=