2013年8月15日木曜日

第643話 塀の外の飽きない面々 (その3)

御徒町の鮨屋でウミヘビらしきものを食したら
今度は小菅(こすげ)の拘置所裏のお堀で
ウミヘビらしきものに出くわした。
あいや、くわばら、くわばら。

淡水で泳いでいるのだからウミヘビではない。
かといって猛毒を持つマムシでもなさそうだ。
帰宅後、調べてみると、日本には6種類ほどのヘビがいた。
一般的なのはシマヘビでこれは人畜無害。
一番大きいアオダイショウは危難が及ぶと木に登って逃げるそうだ。
逆にヤマカガシは水に飛び込んで逃げるらしい。
となれば、目撃したのはヤマカガシか?
いや、のんきなことは言っていられない、
ヤマカガシは毒ヘビで咬まれたらあの世に直行もあるという。
あいや、再び、くわばら、くわばら。

なおも調べると地球上にいるヘビのほとんは泳げるんだと―。
ヘビにカナヅチはいないみたいだ。
カナヘビってのはいるが、あれはヘビじゃなくてトカゲの仲間。
どうやら見掛けたのはシマヘビの可能性が高い。
さして広くもない掘割周辺にかくも多彩な生きものが生息していた。
いや、驚き、桃の木、山椒の木であった。

広大な土地に立つ、壮大な建物の表側に廻る。
面会者用の門が閉ざされているということは
日曜日の面会はNGなのか?
門前に「池田屋差入店」というのがあった。
ふ~ん、差入れ専門の店があるんだねェ。
だけど1軒だけじゃ、差入れされる受刑者も飽きちゃうだろうに―。
並びにはカフェ&ダイニング「アイ アイ」なんて店があった。
カラオケもOKらしい。
いったい誰が歌いに来るのかネ。

界隈を散策していたら、これまた珍しい看板に遭遇した。
なんと、”保釈金保証協会”だとヨ。
いやはや、世の中にゃさまざまな”協会”があるものよのォ。
いい機会だから”協会”にも”教会”にも無縁のわが身を省みる。
今のところ、お縄を頂戴するほどの罪を犯したことはないが
塀の中と外の”境界”に立ち、
思いが散りぢりに乱れたのは”今日かい?”、なんちって。
何もないけど、飽きないや小菅は!

小菅の町を過ぎ、荒川土手に出た。
このクソ暑いのに野球少年が白球を追いかけている。
応援に駆けつけたママたちは一様に日傘をさしている。
傘のおかげで陽射しはさえぎれても
吹きすさぶ風に舞い上がる、
土けむりと砂ぼこりはいかんともしがたい。

荒川越しに西空を見れば、青空にポッカリ浮かぶ白い雲。
すれ違った自転車のオジさんに訊いてみた。
「北千住に行くにはあっちとこっちと
 どっちの橋を渡ったら近いでしょうか?」
「う~ん、ちょうど中間だから好きなほうを渡ったら・・・」
「アッ、そうですか? そうですよねェ、いや、どうも、どうも・・・」
青空の下の日曜日は、どこまでものどかであった。

=おしまい=