2013年8月14日水曜日

第642話 塀の外の飽きない面々 (その2)

ある日曜日の午後、東京拘置所の裏手にいた。
受刑者の面会ではない。
真夏の散歩の一環であり、炎天下を歩いてやって来た。
ジャンニ・モランディ、あるいはカトリーヌ・スパークではないが
「太陽の下の~才」といったところか。
ハハ、古いネ、J.C.も。
われながらこりゃ相当なお歳だわ。

ウィキペディアに頼ると、東京拘置所は以下の通りであった。

 法務省東京矯正管区に属する拘置所。
 通称「東拘(とうこう)」だが
 所在地である「小菅」と呼ばれることが多い。
 全国に8箇所(東京・立川・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・福岡)ある
 拘置所の一つであり、松戸拘置支所を所管する。
 収容定員は約3000名。
 刑事被告人を収容する施設では、日本最大の規模を持つ。

以前、千葉県・松戸市に長いこと棲んだのに
拘置支所の存在はちっとも知らなかった。
もともと千葉刑務所の所管だったものが
この5月に東京拘置所に移管されたそうだ。

堀の前にたたずめば、景色は10年前とまったく同じ。
水面(みなも)に真っ黒な真鯉が群れ泳いでいる。
変わったのは環境が整備され、堀の周りにデッキが配されたことのみ。
歩けば木の床が足裏に心地よい。

デッキに立つとエサをもらえると思ったのか鯉が集まってくる。
真鯉に混じって緋鯉の姿も見える。
寄ってはこないが、かなりの数の亀も生息していた。
ただし、ことごとく頭の横に朱色のスポットが入ったアカミミガメだ。
小ちゃい頃はミドリガメと呼ばれて
子どものペットとして可愛がられたものが
大きくなって醜くなって手に余り、
大量に投棄された結果、もたらされたのがこの惨状である。
おのれのペットを棄てる人間は犬畜生にも劣る輩、いつの日か天罰が下ろう。

デッキを西に進んでゆくと、掘割にツガイのカルガモが現れた。
人でも動物でも円満な夫婦は傍目にもほほえましい。
相当数のムクドリが茂みから出たり入ったりしている。
狭い区域ながらけっこう野鳥が棲みついてるんだなァ。
キジバト(ヤマバト)が1羽、草むらに舞い下りた。
通常ペアでいることの多い鳥だが、なぜか単身だ。

水面を細い生きものが泳いでいた。
ウナギかと思ったら、なんと蛇、それも2匹である。
堀は淡水だからウミヘビではなさそうだ。
遠目で定かではないがヤケに白っぽい。
白い蛇は神の使いじゃないか。
次から次へと現れる面々に動物好きはまったく飽きない昼下がり。

=つづく=