2013年8月22日木曜日

第648話 みんなウナギが好きなのサ (その1)

週刊誌を開けば必ず連載にブチ当たる東海林さだお御大と
「キン肉マン」に実名で登場する中野和雄先輩。
このお二人をを囲む会は2、3ヶ月にいっぺん開催される。
男性はJ.C.を加えて3名、相対する女性もほとんどの場合3名だ。
いつも3対3の「パンチ・デ・デート」状態なのである。
何が起こるってワケじゃないけどヨッ!

開催地は決まって下町、それもほぼ浅草に限定されている。
女郎衆と落合う前にビール好きの野郎どもは零次会に集結するのが常。
河岸は「神谷バー」だったり、「正直ビヤホール」だったりだ。
此度は六区ブロードウェイ裏手の立飲み「安兵衛」へ赴いた。

オジさん3人、気持ちよく生ビールで乾杯したが
店内にタチの悪い酔漢が一人居やがった。
不幸中の幸いでシツコくからんでくるほどでもなかったから
適当にいなして熟女たちの待つ会場へと移動する。
今宵の舞台は浅草一のうなぎ屋「鍋茶屋」だ。

浅草で名の通るうなぎ屋は「前川」、「色川」、「初小川」の”三川”に
「やっ古」、「小柳」、「川松」といった店々である。
でもネ、でもですヨ、J.C.が愛するのはビューホテル近くの「鍋茶屋」。
とにかく料理・接客・雰囲気・値段と、四拍子揃って非の打ち所ナシ。

宵い闇せまれば悩みははてなし。
6人合わせて380歳超えが小上がりの座布団に居座った。
オトコは胡坐、オンナは正座である。
メンバーの表情をそれとなくうかがうと、
心なしかみなさんウキウキしている。
なぜだろう? なぜかしら?
答えは簡単、みんなウナギが好きなのサ。
殊にここ数年、日常的には食えなくなった高級魚だからネ。

「鍋茶屋」がエラいのは第一にそのお通し。
あざとい居酒屋チェーンのように
有無を言わせずゴミみたいな小鉢をオッツケて
金数百円也をせしめるような悪行は絶対に犯さない。
下町の食べもの屋には他所にない矜持がある。

ビールや酒を注文すると女将サンすかさず、
「お通しはいかがいたしましょうか?」―
お伺いを立ててくれるのだ。
値段を忘れたけど、たぶん300円くらいだったと思う。

この廉価なお通しが実にすばらしい。
たこ・〆さば・かまぼこ・玉子焼き、それぞれ真っ当なのが1切れづつ。
お替わりしたいくらいのものである。
世の居酒屋サンよ、一度でいいからここのお通しを食べてみて
わがフリ見直しておくれでないかい?
自分とこの駄作はもう恥ずかしくて金輪際出せなくなるぜヨ。

=つづく=