2015年12月8日火曜日

第1246話 鯛や鰻の舞踊り (その2)

 ♪  たそがれゆく銀座 いとしい街よ
  恋の灯つく銀座 夢買う街よ
  あの娘(こ)の笑顔が可愛い
  ちょっと飲んで行こうかな
  ほんとにあなたって いい方ね
  でもただそれだけね
  たそがれゆく銀座 いとしい街よ
  恋の灯つく銀座 夢買う街よ  ♪
        (作詞:相良武)

松尾和子&和田弘とマヒナスターズの共唱、
「銀座ブルース」のリリースは1966年。
オジさん・オバさんのデュエットとなれば、
「銀座の恋の物語」と「東京ナイトクラブ」が双璧だろう。
「銀座ブルース」はその二大ヒットに匹敵する佳曲にも関わらず、
歌われることはほとんどない。
歌詞もメロディーもこちらのほうがずっとオサレだと思うが
カラオケ・スナックで聴いたことが一度としてないのだ。

ちょいとおこがましいけれど、カラオケ好きのお父さんにアドバイス。
スナックのママとデュエットするなら「銀恋」よりも「銀ブル」がよい。
ママたちは概して「銀ブル」が好きだからネ。
こっちのほうが間違いなくモテる。
スナックのママと鮨屋の大将にとって”銀座”は
思い入れのある特別な街、夢買う街なのですヨ。

たそがれゆく銀座の街を見下ろしながら
「竹葉亭銀座店」の窓際の席で
のんびりとビールを飲んでいる。

この店にふれた一文を自著から紹介てみしたい。
例によって「文豪の味を食べる」の夏目漱石である。

夏目漱石は自作の小説に
数々の料理屋・菓子舗・百貨店を実名で登場させている。
殊に処女作の「吾輩は猫である」に顕著で
うなぎの老舗「竹葉亭」もそのうちの1軒。
「竹葉亭」は江戸末期に
京橋の浅蜊河岸で留守居茶屋として創業し、
明治9年にうなぎを専門に扱うようになった。
その後、同30年には銀座・尾張町に新しい店舗を出したというから
漱石が通ったのは尾張町に違いない。
 
尾張町といえば、今なら銀座5丁目あたり。
現在の「竹葉亭銀座店」と地番を同じくすることになる。
実はこの銀座店が実に使い勝手のよい店だ。

地下・1階・2階と3フロアにまたがるうち、
晴海通りに面する2階の窓際が特等席。
街の灯りと道行く人々、
走るクルマのテールランプを眺めながら
食べるうな丼には格別の味わいがある。
食道楽の映画監督・小津安二郎が愛好したのも
本店ではなく、銀座店のほうである。

=つづく=