2015年12月25日金曜日

第1259話 グッと巣鴨がイカすなア (その4)

 ♪  つたのからまるチャペルで 祈りを捧げた日
  夢多かりしあの頃の 想い出をたどれば
  なつかしい友の顔が 一人一人浮かぶ
  重いカバンをかかえて かよったあの道
  秋の日の図書館の ノートとインクのにおい
  枯葉の散る窓辺 学生時代    ♪
          (作詞:平岡精二)

ペギー葉山が歌った「学生時代」がリリースされたのは1964年。
そう、東京オリンピックの年である。
レコーディングにあたり、
作詞者(作曲も)の平岡精二とペギーが
大論争を繰り広げたというエピソードが残っている。
争いは曲のタイトルをめぐってであった。

「大学時代」を主張する平岡に対し、
ペギーは断固として「学生時代」をゆずらなかった。
彼女曰く、
「誰もが大学に行けるわけじゃないから・・・」―
まことに正鵠を射ており、それもそうなのだが
「大学時代」ではどうにも音の響きが悪い、悪すぎる。
そしてダサい、ダサすぎる。

「大学時代」のままだったら大ヒットにつながったろうか?
半世紀を超えて歌い継がれてきただろうか?
おそらく答えは”No”だ。
ペギーによる殊勲の逆転ホームランだったと言える。

多くの方がご存知のように
名曲「学生時代」の舞台は青山学院大学。
論争の二人の学び舎である。
平岡はペギーの2年先輩で
同窓の親近感があったからこそ
ペギーも言いたいことが言えたのだろう。

往時、若い女性歌手が作詞・作曲の大センセイに
モノ申すことなど前代未聞だったハズ。
もっとも美空ひばりが古賀政男の「悲しい酒」をもらう際、
「センセ、もうちょっとゆっくり歌っていいかしら?」―
こう注文をつけている。
原曲はもっとアップテンポの明るいメロディーだった。

大御所・ひばりに諭されたら
大御所・古賀も無下には断れまい。
これもまたひばりのクリーンヒットで
そのままだったら彼女を代表する佳曲に育ってはいまい。

ペギー葉山といえば、この「学生時代」と
「南国土佐を後にして」が二枚看板。
実に甲乙つけがたく、J.C.はどちらも大好きだ。
ここにある一曲を加えてマイ・ベストスリーとしている。
その曲については次話で―。

=つづく=