2015年12月29日火曜日

第1261話 グッと巣鴨がイカすなア (その6)

巣鴨にはミシュランに掲載されたラーメン店「蔦(つた)」がある。
なあんだ、くだらねェ、オヤジギャグか!ってか?
仰せの通りでございやす。
まあ、気を取り直されて先をお読みくだされ。

当然ながら「蔦」は行列の絶えない店である。
ちょうどうまい具合に店頭の横には
マンションのエントランスに続くけっこうなスペースがあって
客はそこに並ぶことになる。
つたがからまるどころかコンクリートの打ちっぱなしだけどネ。

行列や人混みを極端に嫌うJ.C.、
店先を何度か通過したことはあっても入店はしていない。
「蔦」の格調高き(?)ラーメンを食する機会に
ついぞ恵まれなかったのだ。

その日の午前10時、千石の交差点において
とある会合で顔を合わせたT橋サンとバッタリ出くわした。
短い会話のあとに彼曰く、
「オカザワさん、今日の昼めしはもう決まってる」
「いや、ベツに―」
「そんならコレあげるヨ」

ポケットから取り出したるは小さな黄色い切符状のもの。
ラミネートされており、整理券としたためてある。
これが「蔦」が配ったものだった。
「でも今日は”味噌”の日なんだってサ」
「”味噌”でも”醤油”でも食べたことないからおんなじ、おんなじ」

何でもよく使う駐車場が「蔦」のそばで
たまたま前を通りかかるとスタッフが整理券配りをしていたんだと―。
渡りに舟と受け取ったものの、
再訪しなきゃならない正午には仕事の都合でいけないんだと―。
やったァ!なんて叫ばないがラッキーだとは思った。
貴重なものをゆずり受けたのだから丁重にお礼を述べて別れる。

”集合時間”が12時なので2時間つぶさなけりゃならない。
モズバーガーの2階へ上がり、紅茶を飲みながら
「生きる歓び」の原稿を書き始める。
1時間少々で2話ぶん書き上げ、あとは駒込界隈をブラ散歩。
11時55分には現地に到着の巻である。

当日は水曜日だったが店先の貼り紙には水曜定休、
火曜は”味噌の陣”とあった。
なんだかヘンだがスケジュールを変更したのだろう。

整理券を持っていても5分前ではちと遅かったらしい。
第一グループが入店したあとで短い列のうしろに―。
イヤな予感がしたけれど、こうなったらほかに手立てがない。
そんなに待たされなきゃいいけどなァ・・・。

=つづく=