2016年3月10日木曜日

第1313話 小津の愛したダイヤ菊 (その7)

ひとまず劇場を右手に出た。
すると目の前には黒山の人だかりである。
それも若い女性ばかりが選り取り見取り状態だ。
いや、こっちが選っても向こうがお断りってか?
もっとも多少トウの立った方が散見されはしましたけどネ。
そう、スカラ座のお隣りは東京宝塚劇場でありました。
それにしてもスゴカねェ、
タカラジェンヌの人気ときたら衰えることを知らない。

帝国ホテル新館(といってもかなり古いがネ)前のJRガードをくぐり抜け、
コリドー街を土橋に向かって歩む。
進路を新橋方面に取ったことになる。
コリドー街はちょいと見ないあいだにずいぶんと店が入れ替わった。

ただし「美登利寿司」だけは相変わらずの行列だ。
ここが理解に苦しむところ。
せっかくの銀座、ほかに行くべき鮨屋はいくらでもあるだろう。
どうせなら世田谷区・梅ヶ丘の本店に遠征することを勧めたい。
まあ余計なお世話の指摘を受ければそれまで、
自分が悪くありました。

新橋仲通りから赤レンガ通りを流してゆく。
暖簾を出していない店が多いのは日曜のせいもあろう。
この調子じゃ御成門、浜松町界隈に足を延ばしても
よい結果は生まれまい。

新橋駅前に舞い戻った。
ニュー新橋ビルの地下なら多くの居酒屋が両手をひろげて
われわれを待ち受けているハズだ。

 ♪   子供たちが空に向かい 
   両手をひろげ 
   鳥や雲や夢までも
   つかもうとしている
   その姿はきのうまでの
   何も知らない私
   あなたにこの指が
   届くと信じてた      ♪
    (作詞:久保田早紀)

1979年秋にリリースされた久保田早紀の「異邦人」。
とにかく衝撃的だった。
何だって素人同然の21歳がかくも素晴らしい楽曲を
作詞・作曲できたのであろうか?

曲のほうはいランの民族音楽の影響を多分に受けている。
彼女の父親がイランに赴任していて
幼少の早紀に当地の音楽を吹き込んでいたからネ。

しかし、J.C.がより驚いたのは歌詞のほうであった。
例によって脇道の迷い道なれど、次話をお待ちくだされ。

=つづく=