2016年3月24日木曜日

第1323話 花嫁は二児の母 (その6)

とにもかくにも東京プリンスの中国料理店、
「満楼日園」の乾焼蝦仁にブッタマゲたのであった。
それまでの20年に及ぶ人生において
まるで経験したことのないタイプの味だったのだ。

わが人生において美味しい食べ物を口にしたとき、
その美味に身体が震え、鳥肌が立ったことはたったの三度しかない。
以前にもどこかで書いた記憶が無きにしも非ずなれど、
恥ずかしながら今一度、振り返ってみたい。

その1(1967年春)
J.C.が紅顔の美少年(?)であった中学三年生の終り。
こう見えても生徒会の役員を・・・ってゆうか~、
生徒会長だったんですけどネ。
校長先生がご苦労さんの意味を込め、
役員全員に昼ごはんをご馳走してくれた。
それは1杯のかつ丼で実に美味しかった。
かつ丼を何度も食べた経験はあったが、かくも上品なのは初めて―。
どんぶりのフタを開けたときの美しさが目に灼きついている。
つゆが完ぺきに切ってあり、バカ若者の好むつゆだくとは真逆。
人生でベストのかつ丼だったことに間違いはない。
ただ残念なのは店名が判らずじまい、それだけである。

その2(1971年秋)
「満楼日園」の乾焼蝦仁。
この料理は日本生まれの中華料理らしいが
天下の美味でありました。
一流店に行かないと本物に出会えないのが玉にキズ。
そのせいか最近はほとんど口にする機会に恵まれない。
悲しむべきか。

その3(1978年夏)
わが人生における最後の晩餐は浅草の「弁天山美家古寿司」。
そう心に決めている。
初めて訪れたときの相方は当時の恋人で
東京プリンスに出入りしていた花屋さんのスタッフ。
最初のにぎり、平目の昆布〆にもう身もだえしてしまった。
続いての小肌と穴子にも鳥肌が立ちまくり。
今まで食ってた鮨、ありゃいったい何だったんだ!

さて、2016年3月。
数日前に東プリに電話を入れた。
もちろん復刻版のための予約である。
ところが希望の日にちが満席で
最終週の週末になんとかおさえることができた。

せっかくだから東プリ時代の同僚に
レンラクをとると二つ返事の快諾。
懐かしき復刻料理と往年のプリティ・ウーマンは
盆と正月が一緒に来たようなもので
今からダブルの楽しみを心待ちにしている。
もちろん、その夜のことは報告いたしますとも!

=おしまい=

「ザ・プリンス パークタワー東京」
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