2016年3月22日火曜日

第1321話 花嫁は二児の母 (その4)

プリンスホテル・グループのフラッグシップ、
東京プリンスが今月いっぱいで
1年間の長期休業に入ると聞いては看過できない。
しかもラスト・ワンマンスは
当ホテルの伝統料理を復刻させるという。
 
ブッフェ形式だから多種多彩な料理を少しづつ、
心ゆくまで堪能することができる。
これもみな花嫁・K枝のおかげだ。
彼女の披露宴に出席していなければ、
”このこと”に気づかなかっただろう。
 
復刻ブッフェのポスターには
四つのディッシュが大きく紹介されていた。
紹介してみよう。
 
和食ー金目鯛の煮つけ
フレンチー牛肉の赤ワイン煮パイ包み焼き
中華ー海老のチリソース
デセールーベイクド・アラスカ
 
ほかにもスモークサーモン、ローストビーフ、
ロブスター・テルミドールなど、
深く深く慣れ親しんだ美味が並んでいる。
 
1970年代は町場の仏料理店がまだ少なく、
シティホテルがダイニングシーンをリードしていた。
当時の東京の三大ホテル、
帝国、オークラ、ニュー・オータニ、
そのすべてのメインダイニングはフレンチだったのである。
 
ご多分にもれず東京プリンスにも
「ボー・セジュール」というフレンチのメンダイがあった。
J.C.が蝶タイとタキシードに身を固めていたとき、
牛肉赤ワイン煮のパイ包み焼きは
当ホテルのスペシャリテではなかった。
というより、ただの一度も見たことがなかったネ。
 
代わりにポール・ボキューズのオリジナル料理、
バール・アン・クルート(スズキのパイ包み焼き)が
たびたびパーティー料理の花形となっていた。
 
あれは1987年の秋口だったかな?
ニューヨークに赴任して半年ほど経った頃である。
往時のミシュランガイドブック・NYで
フレンチの最高峰と評された「Lutece」を訪れた。
 
男ばかりが4人、いわゆる接待ディナーだ。
カップル主体の素敵な店内にダークスーツのグループ野郎。
そんな無粋なマネは避けたかったが
クライアントの希望とあらば、これもまた致し方なし。
気が進まぬままに予約を取ったことを
つい昨日のことのように覚えている。
 
=つづく=