2017年5月2日火曜日

第1613話 ラブホ三連荘 (その3)

浅草の「神谷バー」同様に、
上野界隈で行き着けの「味の笛」には
すでに十数名の行列が形成されていた。
いやはや、門仲の「魚三酒場」並みですな、これは―。

待つことホンの2~3分。
暖簾が掲げられて一同2階へ。
去年の改築時に階段の位置が変わった。
しかもこれが螺旋階段(らせんかいだん)ときたもんだ。

  ♪   螺旋階段 昇る靴音で
    愛されてると 感じた  ♪

ハイ、やめます、やめます、やめときます。
でも歌い手さんとタイトルだけは一応、明記。
桂銀淑の「夢おんな」であります。

「味の笛」2階のキャパは20数席といったところだろうか。
さいわいにも並んだ全員が居場所を確保できた。
すると今度は最初の1杯のため、
ドリンク&フード・カウンターに並ばなければならない。

グループ客は旗振り役が
「オマエ何飲む? アンタは?」なんて自席でやってる間に
こちらは素早くカウンターに直行した。
ゲットしたのはスーパードライの中ジョッキならぬ、
中コップ(プラスチックの)と数の子入り浸し豆だ。
枝豆は好物でも何でもないが浸し豆はワリと好き。
殊に数の子とコラボすれば大好きだ。

子どもの頃のお正月。
おせちで伊達巻きや栗きんとんなど、
女子どもが好むものよりも
真っ先に箸をのばしたのは数の子だった。
他の食物にはない、あの歯ざわりに加えて
ユニークな風味にも惹かれた。

生をお替わりするときに先刻、
見定めておいたホタルイカを購入。
富山産と明記されている上物である。
その身はプックリとはち切れんばかり。
口福が約束されたも同然だ。

本来は辛子酢味噌で味わいたいところなれど、
添えられていたのはおろし生姜のみ。
まあ、これはこれで粉わさびよりはいい。
一つつまんで納得の美味さである。

店内を見回すと、ほぼ満席に近い。
さらに来客が詰めかけて空席が見つからず、
あきらめて引き返すカップルや三人組が出てきた。
いや、早めに仕掛けて正解だったぞなもし。

=つづく=