2017年5月16日火曜日

第1623話 真子と白子の強力コンビ (その3)

白金は四の橋のスーパーで買い求めた、
愛媛県産・養殖真鯛のアラを調理している。
下ごしらえの湯通しを終えたところだ。

水・日本酒・醤油・砂糖を煮立て
生姜数片とともにカブトをゆっくり炊いてゆく。
落としブタなどわが厨房にはないから
適当に裁断したアルミホイルをかぶせる。

半分ほど火が通ったところで
真子&白子をカブトの両サイドに分けて滑り込ませた。
そのまま中弱火で10分くらいかな?
いや、もっと短かったかもしれないが
こういうものは大体でいいんだ、大体で―。

一方、あまり身肉の付いていないアラのほうは
やはり少量の生姜とともにゆっくり水煮にしてゆく。
こちらは潮汁にするので、つゆに透明感を残したい。
強火だとどうしても濁ってしまう。

味付けは塩のみ。
今回はゲランド産の粗塩を使ってみた。
サン・マロ産の海藻入りである。
ゲランドはフランス北西部、
ブルターニュ半島の南側の付け根にある街。
サン・マロは逆に半島の北側付け根に位置している。
広大なサン・マロ湾が目の前に拡がり、
あのモンサンミッシェルが湾に浮かんでいる、
といったほうが通りがいいだろう。

その日の晩酌は小田原産・かまぼこで、まず板わさ。
それに北海道産・たら子のチョイ焼きで
よく冷えたビールを飲んだ。
かまぼこは普及品だが、わさびがいいから美味しさ倍増。
たら子は北海道・虎杖浜の上物につき、不味いワケがない。

菊正の樽に切り替えるとき、厨房に立ったついでに
いただき物の葉わさびでおひたしを手際よく作る。
これまた貰ったエシャレットには信州味噌を添えた。

続いて潮汁。
出汁が出過ぎるほどに出ており、
こんな吸い物は日本酒との相性がピッタリだ。
早くも樽酒は2カップ目。

そしていよいよ真子&白子の煮付けである。
真子はときどき機会に恵まれても白子は滅多に出会えない。
当然、稀少価値のボーナス点が加わり、
舌がより反応してしまう。

締めのカブトは目玉の周囲までしゃぶって堪能しつくす。
本来は多少クセのある真鯛より繊細な平目を好むが
当夜は真鯛の底力に圧倒され、翻弄された。
こういう夕餉もまた、
「孤独のグルメ」と呼んで差し支えないのでありましょう。

=おしまい=