2017年5月26日金曜日

第1631話 多摩川渡って新丸子 (その3)

飼い犬の危険度、飼い猫の安全性はともかく、
新丸子の「三ちゃん食堂」である。
いかにも町の中華屋然とした暖簾をくぐって入店した。
ウワッ! 店内は熱気ムンムンである。

見渡せば4~50席はあるだろうか、
そのほとんどが客で埋まっている。
大小のテーブルが店の両サイドに二直線。
2~3の空席があるものの、
四人掛けを三人組が占める卓で
最後の椅子に座っての相席はありえない。

こちらは落ち着かないし、
第一、三人組が歓迎してくれるハズもない。
こんなケースで当方が妙齢の美女だったら
ウェルカムなんだろうがネ。

店の突き当り、一番奥に6席ほどのカウンターがあった。
その1席が空いている。
マギー司郎風に横文字で
「ラッキー!」とつぶやきながら一路直進の巻。

赤坂見附から明治神宮前。
短い距離の散歩ながら
その時点で渇いたノドになおも我慢させて
ここまでやって来たのだ。
猫じゃないけど、ノドはカラカラを超えてゴロゴロのゴロ。
注文するいっときでさえ、もどかしい。

あゝ、新丸子はすでに神奈川県。
キリンのテリトリーである。
生ビールは一番搾り、瓶はラガーかクラシックラガーだ。
思い迷うヒマもあらばこそ、中ジョッキをお願いした。

1分と待たずに運ばれたジョッキをググゥ~ッと飲った。
半分以上を一気に飲み干し、一息入れる。
生とともに運ばれたのは小皿の白菜新香だが
小鳥のエサ程度の分量しかない。
まっ、サービス品のようだから文句は言えない。
ちょいと酸味が立って、これは塩漬けでなくぬか漬けだろう。

暖簾にあるごとくメインは中華料理だが
刺身・天ぷら・フライなど、メニューは150種に近いという。
迷うなァ、目移りするなァ。
ふと気がつくと、自席はデシャップ台のすぐ脇だった。

デシャップ=dish up
いわゆる料理が出る窓口である。
よって店内の客に供されるすべての皿が丸見えなのだ。
こりゃもっけの幸い、じっくり見極めて注文するとしよう。

=つづく=