2017年5月4日木曜日

第1615話 ラブホ三連荘 (その5)

京都産ホタルイカの赤ちゃんはホントに可愛いい。
そりゃ、そうだろう、
大人のホタルイカですら小っちゃいんだから。
とにかく小指の爪先ほどしかない。
いや、もっと小さいかな。

見つめていると、健気に何か訴えてくる。
「どうぞ、ウチを食べておくれやす」―
言葉など交わさずとも目と目でつぶやく二人の心。
互いの意思はじゅうぶんに通じ合った。

いや、通じ合わなくともせっかくの出会い、
機を逃さず、ちゅうちょなく買い求めた。
グラスから受け皿にあふれる北の勝を
こぼさぬよう注意しながら自席に運ぶ。

ベイビー・ホタルは15匹ほど群れていた。
さっそく一つ、指でつまんでポリポリ。
これは煮干しというよりもスルメ干しだネ。
噛んでるうちに旨みがジンワリにじみ出てくる。
濃厚ではなく繊細な味わいだ。

小皿に北の勝と生醤油を割り入れ、即席づけにしてみた。
ついでに残ったボイルのホタルも同居させてやってしばし待つ。
フム、硬さがほぐれ、酒と醤油を身肌にまとい、
美味さ倍増と相成った。

北国の清酒の酔いが回ってきた。
振りかえれば、浸し豆、ゆでホタル、伸子ホタル、
食したものはほとんど腹の足しになっていない。
空腹感はちっともないけれど、満腹感などもっとない。

足元を少々ふらつかせながら3杯目。
”帰りがけ”の駄賃と此度はホタルイカの沖漬けを購入。
二度あることは三度あった。
これまでのつまみ3品はみな薄味ものばかり。
初めてしょっぱいのを所望したわけだ。

いや、ホントにしょっぱいぜ。
味はよいけど塩辛い。
日本酒を飲み過ぎると翌日に差しさわりがあるので
何とか3杯目の北の勝で沖漬けを食べきった。
まったくもってホタルイカの三連荘であった。

ホタルイカは判ったからラブホへはこれから行くのか?
ってか?
第一、ラブホなら御徒町じゃなく、
JRで二つ先の鶯谷だろがっ! ってか?

ありゃ、何か勘違いしてません?
三連荘は、ラブ・メイキング・テルじゃなくって
ラブリータルイカラブホなんすヨ。
読者の中には意外とエッチな人が多いのネ。

=おしまい=

「味の笛」
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