2017年5月25日木曜日

第1630話 多摩川渡って新丸子 (その2)

先週末だったか、朝日新聞の夕刊1面に
素晴らしいカラー写真が掲載されていた。
多摩川を遡上する若鮎をくちばしで捕らえたカワウの姿だ。
カワウにしろウミウにせよ、ウという野鳥は好き。
どこか孤高の哲人をしのばせる風情、
コロニーでは群れても
あまり団体行動を取りたがらない、その生き方がよろしい。

乗った電車は今まさに多摩川に架かる鉄橋を渡ってゆく。
ほどなく神奈川県に入って最初の駅、新丸子に到着した。
目指す「三ちゃん食堂」は
西口改札を出て1分の距離にあった。

創業から半世紀。
店先に立つと、
なるほど行き過ぎた歳月の長さがモロに伝わってくる。
ありがちな暖簾には”中華料理”の大きな四文字。
その左側には”湯麺”、右には”餃子”の小文字が
染め抜かれていた。

駅周辺がモダンに生まれ変わった新丸子にあって
歴史を感じさせる稀少な1軒と言えよう。
振り返れば、この町に来るのはおよそ15年ぶり。
記憶が不確かながら様子はすっかり変わっている。

当時のGFは新丸子の生まれ。
たまたまこの辺りを訪れた際に
その生家の現在を見に行ってみよう、となった次第だ。
生家はそのまま建っていた。

彼女曰く、
「子犬を飼ってたんだけど、向かいのネ、
 そう、このウチの犬に咬まれちゃって・・・」―
数日後に愛犬は息を引き取ったそうだ。
今もある向かいのウチをにらむ瞳に怨みがこもっていた。

そう言えば、何年か前に英国のバッキンガム宮殿で
エリザベス女王の愛犬がアン王女のこれも愛犬に
彼女たちの面前で咬み殺された事件があった。

最近は日本でも祖父母の飼うリトリバーに
孫娘が殺される悲劇が起こった。
犬はコワいねェ。
犬に限らず殺傷能力を内在する動物は
例え飼主になついていても危険なのだ。

その点、猫は安心、安全。
蝉や雀をいたぶることはあってもせいぜいが鼠どまり。
間違っても乳飲み子を殺めることはないネ。
近頃の猫ブームは
そんなところに一因があるのかもしれない。

=つづく=