2021年10月18日月曜日

第2765話 志ん生が 愛した天ぷら 様変わり

柳家小三治が亡くなった。

すでにあちらの世界に先乗りしている、

古今亭志ん朝、立川談志を合わせ、

近代江戸落語・御三家の一翼を担う噺家だった。

今話は小三治ではなく、志ん朝の親父さん、

5代目志ん生ゆかりの天ぷら屋のハナシ。

 

 「天庄 広小路店」は

2000年の秋以来だから実に21年ぶり。

数年前に湯島天神そばの本店を利用したが

こちらはかくも長き不訪である。

 

4ヶ月前に築地でうなぎを食べた、

北九州の友人がまたぞろ上京し、

此度のリクエストは天ぷらと来たもんだ。

 

そうそう甘い顔も出来ないから

「まっかせなさい!」とは請け負わず、

「ハイハイ、判りやしたヨ」ってなもんや三度笠。

 

ともにたくさんは食べられないため、

お好みでのお願いとなった。

まずはグラスを合わせ、壁の品札を見上げる。

突き出しは墨いかのゲソぬた。

 

天種のリストは卓上にあり、壁は刺身のラインナップ。

かれい・平目・まぐろ・めじまぐろが並ぶ。

めじを所望したら本日未入荷。

それではとサカナを離れ、赤貝酢にした。

 

賀茂鶴の冷酒に切り替え、揚げ始めてもらう。

てんでんバラバラを避け、なるべく同じ種を食べ進む。

皮切りはオーソドックスに才巻き海老を2尾。

墨いか・めごち・きすと続け、首を捻った。

 

以前はもっと胡麻油の香る、

下町チックな趣きがあったが、ずいぶんお上品。

当店をひいきにした志ん生が好んだ天ぷらとは

明らかに様変わりしている。

今頃、草葉の陰で嘆いてるんじゃなかろうか―。

 

小玉ねぎをはさみ、

相方は好物の帆立とグリーンアスパラ。

当方は穴子で締めた。

会計は2万円弱。

あまり食べなかったが鮨でも天ぷらでも

お好みが高くつくのは致し方ない。

 

そう言えば、志ん生は

次男坊の志ん朝をよく連れて来たとも聞いた。

長男の金原亭馬生は鮨好きで

もっぱら浅草の「弁天山美家古寿司」通い。

その影響で娘夫婦(志乃&彬)の行きつけになった。

 

「天庄」近くの鰻屋「小福」は柳家小さんの御用達。

店にマイ・ドンブリをキープしていたほどだ。

いずれにしろ、鮨・天ぷら・鰻は江戸落語の名跡に

ふさわしい食べものではありますな。

おあとがよろしいようで―。

 

「天庄 広小路店」

 東京都文京区湯島3-41-5

 03-3831-7056