2021年10月26日火曜日

第2771話 シチリア人はイワシ好き (その2)

銀座は「カンティーナ シチリアーナ」の午後。

2皿のパスタと2尾の小イワシが同着の写真判定。

いや、何も勝敗を決めるこたあないやネ。

とにかく同時に着卓した。

ベッカフィーコは姿、味わいともに申し分なし。

レモンではなく、オレンジ果汁を搾るのが習わし。

 

カザレッチェ・コン・サルデもシチリア料理の定番。

“わが家のパスタ”を意味するカザレッチェは

断面がS字型の巻き込みマカロニ。

穴はないけど溝があり、

割れ目にソースが絡んで味が染みこむ。

 

サルデはイワシ、シチリア人は本当に好きだよネ。

このパスタとはとても相性がよい。

定番は穴開きロングパスタのブカトーニだが

近年、シチリアではカザレッチェも人気上昇。

いずれにしろフィノッキオ(ういきょう)が

イワシの匂いをやわらげ、青背の魅力を引き出す。

 

フェットチーネは生パスタのモチモチ感が特徴。

ほぐしたズワイ、小粒のムールが使われ、

トマトクリーム仕立て。

コン・サルデほどではないにせよ、これまた美味。

 

実はメニューにあった、もう1品。

ペンネ・アッラ・ノルマに惹かれていた。

オペラ作曲家・ベッリーニの代表作、

「ノルマ」にちなむ料理は

ナス・トマト・バジル・リコッタで作られ、

肉っ気、魚っ気とは無縁のシンプルなパスタ。

 

シチリア生まれの彼が何につけても

最高傑作に出会うたび、

「ノルマ!」と叫んだことから名付けられた。

 

歌劇「ノルマ」となれば、第一感はマリア・カラス。

彼女の「清らかな女神(カスタ・ディーヴァ)」は

永遠不滅のものながら、先頃亡くなった、

エディータ・グルベローヴァもすばらしい。

 

彼女みたさにNYからウイーンへ飛んだのは

四半世紀も前のこと。

シュターツ・オーパー(国立歌劇場)の演目はやはり

ベッリーニの「清教徒(イ・プリターニ)」だった。

 

あの美しい笑顔を思い浮かべながら

ほろ苦いエスプレッソを飲み干した。

 

「カンティーナ シチリアーナ 銀座6丁目」

 東京都中央区銀座6-2-6

 03-6228-5567