2022年1月5日水曜日

第2922話 独り酒場で年忘れ (その2)

五反田のおでん屋「若ちゃん」。

先客はリーマン3人組だ。

大根なますの突き出しを差し伸べながら

「おでんは何を?」―女将に問われたが

すじ子おろしを所望した。

 

3人組のリーダー格がくさやを通す。

いや、マイッたな。

当方、剣菱の樽酒に移行して

おでんはつみれ&鯨コロを―。

 

いつの間にか5人の会話が始まり、

リーダー格からくさやのおすそ分け。

断るわけにもいかず、小片を一ついただく。

滞空45分で早めの帰途に着いた。

 

翌日も仕掛けは午後から。

JR埼京線・板橋駅に近い「やきとん きみおも」を

訪れると店名が「やきとん ひなた 板橋店」に―。

数年前「きみおも」はひなたグループに吸収されたが

本家の名を名乗るようになった。

 

15時ちょうどで客入りは5割。

入口そばのカウンターを促される。

ドライ中瓶、やきとんはカシラ、タンシタを塩で。

 

菊正宗の熱燗とレバをタレで追加し、

蒸ししゅうまいも2個お願いしたうち、レバが特筆。

女性の焼き手が男性スタッフをリードしており、

店長格は彼女だろう。

 

滞空は30分少々、2軒目に向かう。

去り際、店長がわざわざオモテに出て来て

来店のお礼と今後もよろしくのひと言。

一瞬、郷ひろみの“哀愁”がよぎったけれど

ソイツは置いといて、とにかく心証をよくする。

近いうちの再訪を約し、手を振った。

 

中山道を北に横断し、石神井川を金沢橋で渡り、

十条駅前にやって来ると再開発で景色は様変わり。

おやっ、17時前なのに「斎藤酒場」の暖簾が出ている。

歓び勇み、昭和3年創業の敷居をまたいだ。

 

生も瓶(赤星・黒ラベル・エビス黒)もサッポロ一色。

前日の西新宿「岐阜屋」に対抗するが如し。

黒ラベルと串カツ(2本)を通す。

焼き文化さば(550円)さば味噌煮(420円)以外は

みな 2300円台の品揃えはさすが十条のランドマーク。

「天将」亡き今、余計にその感を強くする。

 

突き出しは大根と大根葉の浅漬け。

ほんのりと柚子が香り、

よく見ると柚子皮が散見される。

この効果は大きく、大根役者を千両役者に変身させた。

 

珍しいむかご(零余子)の塩ゆでを見つけ、即注。

むかごは山芋類の茎が丸く太ったもので晩秋が旬。

黒エビスの小瓶とともに季節の移ろいを味わった。

滞空40分でおいとまし、

これが丑年、外での飲み納めとなりにけり。

 

「やきとん ひなた」

 東京都板橋区板橋1-48-1

 03-3961-3743

 

「斎藤酒場」

 東京都北区上十条2-30-13

 03-3906-6424