2022年1月19日水曜日

第2932話 短い路線バスの旅

杉並区・永福町駅前で身の振り方に思案投げ首。

井の頭線で渋谷方面に戻る気にはなれない。

かと言って反対側も何だかなァ。

肌の合わない武蔵野市・吉祥寺には

もう長いこと行っていない。

 

バスにしよっと。

井ノ頭通りを挟み「大勝軒」の正面に

交番があり、バス停の位置を訊ねると

町のお巡りさん、ていねいに教えてくれた。

 

新宿西口行き or 中野駅行き。

先に来た中野に乗り込む。

バスは始発とあってガラガラ。

「お好きなお席へどうぞ!」と

ドライバー言わなかったが

最後部に陣取って、にわか観光バス気分だ。

 

西永福のヘアピンカーブを右折、方南通りを東へ。

大宮八幡を過ぎた辺りで窓外の景色に目が止まる。

中華料理屋らしき店の看板に「草むら」の文字。

これにはピンと来ましたネ。

 

書き忘れたが「永福町 大勝軒」の創始者は

草村賢治サンとおっしゃる。

ありそうでない草村姓がすぐ近くに共存。

元をたどれば何か縁(えにし)が見つかりそうだ。

 

帰宅後、調べてみたら

「草むら」は賢治サンのお兄さんが開いた店だった。

ラーメンのタイプはまったく違うらしいけどネ。

前話で「大勝軒」の麺は特徴ナシと述べたが

実際は製麺所「草村商店」の特別仕立てであった。

 

それはれとして、バスは左折して環七へ。

ほどなく立正佼成会の敷地内に入り、

法輪閣と大聖堂の間を走ってゆく。

 

おい、おい、何処へ行くんだヨ。

こちとら無宗教なんだぜ。

さいわい聖堂に立ち寄ることはなく、

勧誘者が乗り込んで来ることもなかった。

 

新中野の鍋屋横丁を抜け、

大久保通りを左折後、中野五差路を右折した。

すると今度は窓外に「大勝軒」の大きな袖看板。

此処こそが東池袋「大勝軒」、山岸サンのルーツだ。

 

中野と永福町。

源泉を異にする二つの「大勝軒」を

1台のバスが結んでくれた。

これを単なる偶然とは思えない自分がいる。

 

進行方向に向かって左側に座らなかったら

「草むら」も中野「大勝軒」も

目撃する機会は失われていた。

今年は何かにつけ、右と左で迷ったら

左を選択して生きてゆきたい。