朝目覚めて紅茶を飲みながら
今日の昼めしは煮魚か焼き魚をと思った。
入浴後、朝食抜きで家を出て
不忍通りをテクテク、駒込にやって来た。
いつも立て混む「巣鴨ときわ食堂 駒込店」だが
一番奥の二人掛けに滑り込めた。
目の前は二畳ほどのパントリー。
キッチンとホールをつなぐスペースだ。
居心地は巣鴨本店が快適ながら
駒込支店もけして悪くない。
本日の定食は
ロース生姜焼き・さば味噌煮・真ほっけ開き・
ぶり照り焼き・鰆(さわら)照り焼き
ドライの大瓶、さば味噌煮を通す。
「お味噌汁、大変熱いのでお気をつけ下さい」―
お運びさんに注意を促された、
わかめドッサリに油揚げの浮く椀は本当に熱々。
白味噌ベースで美味しい。
主役のさばは半身付けでボリューム満点だが
ヤケにぬるく、温め直し不十分。
それでも赤味噌の味付けよろしくパクパクいただく。
きゅうり&大根ぬか漬け、野沢菜の新香と
盛りのよいごはんも完食した。
パントリーを眺めていたら
此処を担当するオネエさんが大忙し。
保温ジャーのごはんを次から次へ茶碗に盛りつける。
突如、一節太郎の歌声が耳の奥で鳴り出した。
♪ どこか似ている めしたき女
抱いてくれるか ふびんなこの子
飯場がらすよ うわさは云うなよ
おれも忘れて 浪花節
三ツ聞かそか ねんころり ♪
(作詞:越純平)
1963年リリース「浪曲子守唄」の3番だ。
歌詞は飯炊女だが目の前の彼女は飯盛女。
おっと、いくら何でも
カタギの若い娘さんつかまえて飯盛女はないやネ。
ちょいと調べてみたら江戸の昔、飯盛と飯炊は
同義語で飯炊女は主に上方で使われたらしい。
宿場で客の世話を兼ねる私娼を指し、
宿場女郎とも呼ばれた。
接客係はみな下げ物をしてパントリーに戻る際、
「ただいま~!」―必ず声掛けをする。
狭いスペースで衝突を避ける知恵だろう。
定食のリストから、さば味噌煮が消され、
かわりに単品のさんま開きが定食に加わった。
これで煮魚が失くなった。
残り少ない煮魚にありつけ、
こいつは春から縁起がいいわい。
「巣鴨ときわ食堂 駒込店」
東京都豊島区駒込3-3-21
03-6903-7807