新小岩で乗ったJR総武線を御茶ノ水で下車。
駅周辺にも飲み屋はあるが
駿河台からだと南に小川町・神保町、
あるいは北の本郷・湯島と丘を降るしかない。
莫久来(ばくらい)で飲みたくて湯島に決めた。
そう、桑名から来たクサヤ親父と酌交に及んだ、
奥様公認酒場「岩手屋」である。
ただし、此度は支店のほう。
やっぱり美味いねェ、好きだなァ。
中瓶のドライがスイスイ喉元を滑り落ちてゆく。
突き出しは岩手より山形チックなコンニャク煮。
莫久来を清酒用に半分残しておいて
品書きの吟味に入った。
おお~っと、いかめんちがあるぜ。
当店でコレを見るのは初めて。
と言うより、ヨソではまず見かけることがない。
イカメンチとくれば、思い出すなァ。
かつて麻布十番にあった洋食屋「ミスターガーリック」。
閉業して13年近くの歳月が流れたが
自著「庶ミンシュラン」(2008)では
二つ星を捧げた。
解説を縮めて紹介したい。
麻布十番の裏町に潜む隠れた迷店。
個性あふれる店主による独裁国家のような洋食店。
若い女性が単身で迷い込んだら命の保証はできない。
というのは冗談で、こんな店が1軒くらい、
都会風田舎町にあってもいいじゃないか!
あれは数年前、イカメンチなるおでん屋みたいな、
洋食を出す店があると、風のたよりに聞いた。
オーソドックスなハンバーグやメンチカツを
究極の料理に仕立てるため、
血道を上げる店主の存在も耳にした。
イカの身を叩いて揚げるイカメンチは二重丸。
付合わせの温製ポテトサラダもけっこうだ。
「たいめいけん」出身のオヤジの作る
規格外の料理に敬意を表し、大奮発の二つ星。
そうでありました。
オヤジさんは80代も後半になられよう。
元気な日々を送っているのだろうか?
面白いもので個性的な店主の分布は
業種によって偏りが見られる。
むろん絶対ではなく、相対的なハナシだ。
異色派は鮨屋、うなぎ屋、洋食屋に目立ち、
そば屋、天ぷら屋、とんかつ屋はおとなしい。
どうしてそうなるのかな?
=つづく=