2022年1月18日火曜日

第2931話 昔「大勝軒」と言えば・・・(その2)

杉並区・永福町に66年続く、

伝説の中華そば店「大勝軒」のカウンターにいる。

家を出るとき、まさか40年ぶりに

此処へ来るとは夢想だにしなかった。

 

相変わらず品書きはいたってシンプル。

中華麺1130円  チャーシューメン1340

生玉子50円  メンマ210

ザッツ・オール。

 

つけ麺などない。

というよりハナから作るつもりがない。

餃子の“ギョ”の字もなければ

麦酒の“ビ”の字もない。

40年前と同じ中華麺をお願いした。

 

待つこと8分、デッカいドンブリが着卓。

具材はチャーシュー4枚(肩ロース&もも2枚づつ)、

メンマ、ナルト、きざみねぎ、そして柚子皮1片。

中太ちぢれ麺は2.5玉ほどありそうだ。

 

これまたデッカいレンゲでスープを一匙。

美味いねェ、当店の命はスープである。

煮干し3種・かつお節2種・枯宗田節・さば節に加え、

豚骨・豚背脂、さらに玉ねぎ・じゃが芋で出汁を取る。

それも半端な量ではなく、他店の追随を許さない。

 

このスープが不味いわけなどあるものか―。

反面、麺には特徴なく、歯ざわり、のど越しより

量が量だけにノビにくいことこそ第一条件なのだ。

味の決め手はスープに尽きるものネ。

 

20年前の8月、こんなことがあった。

今は駅南口に移っているが

まだ北口にあった時代の大岡山「むらもと」。

何の予備知識もなく、たまたま入ったラーメン店だ。

 

ラーメンを注文すると、どこかで嗅いだ匂いがした。

ハッと思い当たってスープをすする。

おう、おう、コレはアレじゃないか―。

「失礼ながら永福町の『大勝軒』にそっくりですネ」

「ハイ、まったく同じです」

店主、誇らしげに応えたものだ。

修業先の味を寸分の狂いなく継承していた。

 

さて、永福町。

接客係が小まめに注ぐお冷やに力を得ながら頑張った。

結果、スープは完飲したが麺を半分残しちまった。

やはり残すのはあと味が悪く、

二度と来られないだろうなァ。

 

食べたくなったら大岡山に行くか―。

あすこにはミニラーメンまであるからネ。

スープの香りに送られて、まだ明るい町に出た。

 

「永福町 大勝軒」

 東京都杉並区和泉3-5-3

 03-3321-5048