2022年1月31日月曜日

第2940話 歓びつかの間 いかめんち (その2)

ハナシが脇にそれた。

湯島の「岩手屋 支店」に戻す。

いかめんちを即注したのは言うまでもない。

レモン・醤油・ウスターで味変を楽しもう。

タルタルソーズなんぞも付いて来たりして―。

 

勝手なことをお気楽に想像していた、

愚か者の面前にその想像をくつがえす、

いや、想像を絶する一皿が運ばれた。

 

オー・マイ・グッネス!

肉団子の親方みたいなのが3個、

つゆにヒタヒタと―。

つかの間の歓びがぶっ飛んだ瞬間である。

おでん屋じゃないんだからネ。

 

1粒を半割りにしてパクリ。

けして不味くはないけど、期待が大きすぎた。

がっくり落とした肩をたたく者とていない。

早とちりした自分が悪いのか―。

 

品書きに“いかめんち”なんて載せないでおくれヨ。

“いか団子”あるいは“いかつみれ”とでも

書いてくれたら勘違いせずに済んだものを―。

七福神の純米酒、その冷たいのを所望し、

とにかく3粒やっつけた。

 

肴はもうじゅうぶんながら旬を迎えた、

あいなめ煮つけを発見、追注に及ぶ。

大きな切り身が二つ、合わせて半尾分。

酒盃の七福神をクイッと飲り、

下半身に箸を付けて口元に運ぶ。

 

ん? ヤケに小骨が多いな。

さらに身をほぐせば、

出るわ、出るわ、大量の骨が発掘された。

 

サンマやニシンは骨っぽいがアイナメとて同じ。

それどころか舌へのアタリが、より強い。

あとは悪戦苦闘が待っていた。

おちおち酒なんざ飲んでられやしないヨ。

 

昼に出向いた勝どき「池のや」が

臨時休業さえしていなかったら

新小岩「しげきん」、湯島「岩手屋」で

サカナを食べることはなかったハズ。

世の中、何が災いするか知れたものではない。

 

「岩手屋支店」

 東京都文京区湯島3-37-9

 03-3831-9317