2011年3月1日火曜日

第1話 虎の模様のキスがいた

みなさん、おはようございます。
「生きる歓び」のスタートです。
Qさんサイトの「食べる歓び」同様に
月曜から金曜まで週5回更新しますので
おつき合いのほど、よろしくお願いいたします。

さて、このところ銀座の散歩、
俗にいう銀ブラが以前ほど楽しくなくなった。
なぜであろうか? 答えは簡単ですよ。
銀座の目抜き通りは中央通り(銀座通り)。
新橋から京橋まで南北に縦断している。
嘆かわしいことにこのストリート、
欧米のブランドショップだらけなのだ。
シャネルだ、ヴィトンだ、ブルガリだと、
ここはいったいどこの国?
ティファニーなんか2軒もあって
どうかしてるぜこの街は!

銀座は渋谷・新宿と違い、歩道が広いからとても歩きやすい。
だのに、ズラリと連なる店がファッション系ばかりでは
オジさんたちの気に染まらず、目の保養にすらなりゃしない。
週末の歩行者天国にしたってもはや新鮮味が薄れた。
トドのつまり、「ライオン」でビールを飲むか、
デパ地下を徘徊するほかはない。
若い頃、胸弾ませて訪れた街も今じゃ何だかなァ、なのだ。

鳴物入りで「三越 銀座店」がリニューアルオープンして半年。
オープン当初はあまりの人の多さに敬遠したが
ここ数ヶ月はちょくちょく出向くようになった。
スイーツと惣菜売り場にはいまだに客があふれ、
興味もないから遠巻きに眺めているが
そのぶん精肉・鮮魚売り場では買い物の機会が増えた。

2軒ある鮮魚店のうち、向かって左側の「吉川水産」は
意識的に珍魚を仕入れて客の目を楽しませてくれる。
柳の舞・ゴッコ・カジカ・浪人鯵・赤矢柄、
ヨソではなかなかお目に掛かれぬ連中が日替わりで並ぶ。

先日は珍しくも虎ギスに出会った。

体表に虎のような縞模様が・・・

天種に重用される白ギスよりも愛嬌のある面貌をしておる。
可愛い瞳の持ち主ながらこのトラちゃん、
性格は貪欲で蟹や海老を殻ごとバリバリ食べちゃうそうだ。
キスを名乗っていても実体はハゼの近縁種なのである。

1尾150円ほどだったか?
4尾買い求めたので2尾はその夜のうちに塩焼きにした。
残りは醤油と酒を同割りにしたところへ漬け込み、
翌日やはり焼いて食べた。
どちらも負けず劣らずの美味であった。
白ギスの天ぷらや昆布〆は大好きだが
焼くならトラちゃんが上かもしれない。
ただし、小骨が多くて硬くて半分お手上げ状態。
それが気になって仕方なく、口中の美味が長続きしない。

匂いを嗅ぎつけ、騒ぎ始めた愛猫におすそ分けするも
硬い骨は猫にとっても難攻不落であったらしい。
ちょいと突ついてすぐにソッポを向きやがった。
綺麗なバラには棘があり、旨いキスには骨がある。
猫もまたいだサカナは、もう買わないことにした。

「吉川水産 三越銀座店」
 東京都中央区銀座4-6-16 三越銀座店B3

 03-3564-9221