2011年3月2日水曜日

第2話 読書は楽し!

「本は10冊まとめて同時に読みなさい」――
こう啓蒙する「乱読のススメ」みたいな新刊本を
書店で見かけたのは3年ほど前だったろうか。
3、4冊ならともかく、10冊ともなれば
何が何だか判らなくなっちまうじゃないか。
ところが、くだんの本を読んでもいないのに
いつの頃からか同時進行の冊数が増え出した。

今、読みつつあるのは

 あの人この人         戸板康二
 堕落論             坂口安吾
 柳よ笑わせておくれ      川島雄三・柳沢類寿
 駅弁の丸かじり        東海林さだお
 ゴリオ爺さん           バルザック
 櫻川イワンの恋        三田完
 或る女              有島武郎
 小説 永井荷風         小島政二郎
 荷風の永代橋          草森紳一

10冊には届かずとも相当な乱読だ。
支離滅裂といってよい。
コント55号じゃないが、なんでそうなるの?
(古くてどうもスイマセン)

読み始めて2年経つのに遅々として進まないのまである。
「荷風の永代橋」がそれだ。
草森先生には申し訳ないが、そぎ落としがまったくなく、
冗長にすぎて疲れることはなはだしい。
長大なワーグナーの連作オペラ、
「ニーベルングの指輪」を観るより苦しい。

とは言っても読み物が傍らにあるのはいいものだ。
かの城山三郎翁も告白している。
「夜、読みたい本を手にして寝床にもぐり込む幸せよ」――
まさに読書は楽し!

先日、「わたしの渡世日記」を読了した。
愛する高峰秀子の代表作をやっと入手して読み終えたのだ。
あれほどの知性と筆力の持ち主だから
読み手に倦怠感の“ケ”の字も感じさせないのは立派。
さすがであった、巧みであった、何よりも楽しめた。
ただ、愛するがゆえに苦言を呈しておきたいこともある。

デコちゃん、自分に対する厳しい突き放しも
周囲への謙虚なへりくだりも、度を過ぎればイヤ味でっせ。
またあるときは、ひいきの引き倒しさながらに
ゆかりある文豪や巨匠に加え、
彼らの身内までほめそやすのも何だかなァ。

一例を引用すると

 文豪谷崎潤一郎にとって、私のような者は、正直いって
 「ちり、あくた」のような存在でしかなかったであろう。
 その私を、最後まで家族のように扱ってくれたのは、
 私がたまたま女優で、五年間、心魂かたむけた「細雪」の
 こいさんを演じたからこそ、ではなかったろうか・・・

するってえと、お前サンのファンやサポーターは
「ちり、あくた」を敬愛、恋慕していることになりやすぜ。
そりゃあんまりだ!