2011年3月24日木曜日

第16話 韓国映画を2本観た (その2)

「戦火の中へ」を観た翌々週、
同じく井筒監督絶賛の「悪魔を見た」を観た。
大震災の数日後のことで前日にも出掛けたのだが
計画停電のせいか休館のため、出直した。

有楽町も銀座も心なしか暗く沈んでいた。
街に無言のレクイエムが流れているかのようだ。
平日12時半の上映に訪れた客はたったの13人。
震災以来、人が集まるのはスーパーとコンビニだけ、
それが哀しい。

予告編のあとに本編が始まった。
ほどなくバイオレンス・シーンの火ぶたが切って落とされる。
”静”から”動”へ画面を瞬時に切り替え、
音声のボリュームも最大限に上げて
観客の心臓を直撃する手法に新鮮味はないが
観ている者は確実に驚かされる。

それにしてもいきなり若い女性の頭を
金づちや水道管?のようなもんで
ボコボコぶったたく”悪魔”の残虐さは観ていて不快だ。
もうちょっとやり様があるだろに。
サイコ・キラーの所業といえばそれまでだけど、
そのワリには惨殺する際の精神的な高揚感や
恍惚感がちっとも伝わってこず、
動機付けが浅薄にすぎて必然性も欠落している。

気になるのは片腕を骨折したうえに
アキレス腱を損傷した”悪魔”が暴れること、強いこと、
普通はこんなんあり得んでしょう。
何かというとすぐにナイフで
全編に流れる血は半端な量じゃない。
不朽の名作、「羊たちの沈黙」を連想させもするが
完成度ではずいぶん見劣りがする。
トータルで評価すれば、いいデキながら
井筒のオッチャン、いくらなんでもほめすぎや。

とは言え、この映画のおかげで
韓国人と日本人の彼我の差をとことん思い知らされた。
サッカーの日韓戦を観るたびに思うのだが
彼らのガッツと粘りには、ただ、ただ目を見張るばかり。
以前、Qさんコラムの「食べる歓び」でも指摘した通り、
これには徴兵制の有無が多分に影響していよう。

加えて食いモンの違いも見落とせない。
キムチ・プルコギ・チゲ・ビビンパ、
常日頃からああいうモンを積極的に摂取していると
流血に絶えうる精神と肉体が育成されるらしい。
同じ豆腐を食べるにしてもスンドゥブチゲと湯豆腐じゃ、
精のつき方がまったく違う。
こりゃあ、ハナから勝負にならんわ。