2011年3月30日水曜日

第20話 色紙は大物揃い にせどろ千夜一夜 Vol.1

たった1枚の千円札で
べろべろになるほど飲める店がせんべろ酒場。
それでは1枚足した2千円で
どろどろに泥酔できる店を何と呼ぼう。
これは勝手ににせどろ酒場と名付けてみた。
当ブログにおけるシリーズ物の「にせどろ千夜一夜」。
その第1巻をお送りしたい。

東武伊勢崎線・北千住の1つ先に小菅という駅がある。
日本最大の刑事被告人収容施設、東京拘置所の所在地がここ。
3千人の収容が可能で死刑執行のための刑場も備えている。
入所したこともないし、面会に出向いたこともない。
何を好き好んでと思われるだろうが周囲を何度か散歩した。
駅の高架下にスーパーがあるほか、
拘置所に隣接して団地風のマンションが建っていた。
あとは飲食店がほんの数軒あるだけの町である。

小菅の1つ先が五反野駅。
都心から見て南の五反田に対する北の五反野である。
一駅離れるだけで拘置所の持つ、重苦しい雰囲気はない。
「せんべろ千夜一夜」で採りあげる店を物色するため、
毎週2回は都内の郊外区へも足を延ばしている。
埋もれた佳店の発掘にいそしんでいるのだ。

五反野駅のそばで遭遇したのが「駿河屋」。
店主が静岡出身と推察されるが定かではない。
店構えが相当にくたびれているが、こういうのはむしろ好き。
ただし、外観のスナップは貼付しない。
読者にドン引きされると、営業妨害になりかねないですから。

春は名のみの3月半ば、そう、震災の翌日だった。
店内には石油ストーブが赤々と燃えていた。
テーブルに着くやいなや、店内を見渡してしまう。

三和土の床に赤いビニール椅子

品書きとともに壁には数枚の色紙が貼られている。
北島三郎・里見浩太朗・天童よしみ・高見盛と、
なかなかの大物揃いである。
懐かしのWけんじと毒蝮三太夫もあった。

ビール大瓶 550円  日本酒1合瓶 350円
チューハイ・お湯割り 250円  
レモンハイ・お茶割り 300円

冷奴・目玉焼き 150円  湯豆腐・野菜炒め 400円
肉しょうが焼き・とんかつ 450円  まぐろぶつ 550円
焼きそば 350円  ラーメン 380円  かつ丼 650円

ビールと燗酒を飲り、つまみは野菜炒め。

薄手のとんかつに使えそうな豚肉入り

これが下世話な味でけっこうイケちゃうのだ。
中華メニューと定食類も豊富だが締めにはラーメンを。
昔の味はけっこうながら麺があまりにもヤワヤワ。
老夫婦お二人の切盛りにつき、これは仕方がない。
自分たちの歯が立たないモンを客には出せません。

味にはあまり期待をせずに
懐かしの昭和を体験することが何よりも肝要。
若者の姿はついぞ見掛けぬものの、
孤独なオジさんたちがポツリポツリと飲みに現れる。

「駿河屋」
 東京都足立区西綾瀬2-23-20
 03-3849-5379