2011年3月21日月曜日

第13話 決勝戦の夜 (その1)

横浜は伊勢佐木町の「龍鳳」にて春節の会食を終えた。
あとは日暮れまで界隈を散策し、
暗くなったら身の落ち着き先を探すまでのことだ。

よこはまばしの商店街を突っ切って
時の流れから取り残された一郭に足を踏み入れる。

横浜にも「三丁目の夕日」があった

こんな光景は東京の下町でもトンと見られなくなった。
写真左側の「池田屋」は、しがない(失礼!)町の惣菜屋、
主力商品は天ぷらである。
昭和30年代は町内のあちらこちらに
揚げ立ての天ぷらを商う店が見られたものだ。

古びたこのストリートの名は八幡通り商栄会。
往時は夕方ともなれば、夕餉の支度に追われる主婦が
道の両側にあふれたことだろう。
それが今は哀しいかな、通りすがる人影もまばらだ。

ここでいきなり歴史を感じさせるパン屋に出食わした。

出会ってうれしい「三貴屋製パン」

散歩の途中でこんなのにブチ当たってご覧なさいヨ、
真っ当な神経の持ち主ならノスタルジーに溺れること必至。
迷わず入店したことは言うまでもない。
しかもこの日の深夜にはアジアカップの決勝戦が控えている。
どこぞで飲んで帰宿しても腹が空くに決まってる。
備えあれば憂いなし、野菜サンドとメンチドッグを購入した。

そこから坂を上って山手づたいに外人墓地に至り、
元町からチャイナタウンを抜けてホテルにチェックイン。
シャワーを浴び、ベッドに横たわるヒマもあらばこそ、
再び伊勢佐木町方面に舞い戻った。

好きな野毛の町にシケ込む腹積もりも
その途中で「長八」なる居酒屋に気を惹かれた。
暖簾越しに店内を伺うと、
漂う雰囲気、客の出足、ともに悪くない。

こちらは少々迷うながらも結局は入店。
ビールとポテトサラダをお願いし、
あらためて現状の把握に努める。

ズラリ並んだ一升瓶

どうりで日本酒を飲んでる客が多いワケだ。
推し量るに一升瓶から飲んだ分だけ払うシステムらしい。

数枚の品書きが卓上に配備されている。
こういうものはすべて目を通さないと気が済まぬタチである。
おおっ! こんなのアリか? 驚きのリストを見つけた。

=つづく=