2011年3月7日月曜日

第5話 季節外れのハロウィン (その2)

世にも不思議なパイン缶入り海老マヨに
意表を衝かれてしまったが
缶詰のパイナップルを初めて美味しく感じた。
奇抜な着想に敬意を表したい。
「味王 池袋店」の料理人は大したヤツである。

「池袋店」があるってことは、ほかにも「~店」があるハズ、
気さくな台湾人の女将に訊ねると案の定、
沼袋と中野にあり、すべて血縁でつながっているとのこと。
ただし去年たもとを分かち、独立採算制にシフトした。
おい、おい、そんなことまで訊いちゃいないのに
女将はどこまでも明け透けである。

メインディッシュをさらに1品所望する。
壁の貼り紙をジッと見つめていた相棒の発案は
その名も五目野菜のクレープ包み。
意外である、珍妙である、非台湾的ですらある。
台湾であろうと、中国本土であろうと、
中華料理にクレープなんかあったかい?
運ばれ来たる姿を見て得心がいった。

3点セットでクレープ包みが登場

なるほどネ。
なんのこたあない、北京ダック用の包餅(パオピン)だ。
肝心の五目野菜が見当たらないが容易に想像がつく。
玉子焼きの下に潜んでいるんだろう。
スプーンを入れてやって・・・・・・、ほうら現れた。

おや、ハロウィンのカボチャそっくりだ

まさしく季節外れのハロウィンである。
エッ、ちっともカボチャに見えないってか?
想像力がないなァ・・・・・・、じゃ、これでどうです?

ねっ、見えたでしょ?

四川味噌だれで両目を描き、
口にはご丁寧に歯まで入れてやる。
歯は海老マヨの海老に一役買ってもらった。
まっ、季節外れのハロウィンは自作自演でしたがね。

食べ方は北京ダックと大差ないが
たっぷりの五目野菜のおかげで中身はふくれあがる。
かぶりついていてデジャヴュにとらわれた。
はて、何だったかな?
おう、そうだ、いつかメキシコで食べたタコスじゃないか!
まぶたに浮かんだのはカリブ海に臨むカンクンの砂浜。
空を真っ赤に染めた朝焼けでありました。

「味王 池袋店」
 東京都豊島区2-57-10
 03-3980-5070