2011年3月29日火曜日

第19話 シューズを脱いで食べる鮨

赤坂・・・ といっても最寄り駅は溜池山王だが
その地に評判のよい鮨屋があるという。
で、行ってみる気になった。
ウワサを耳にはさんでからずいぶん日が経って
やっとこサ、重い腰を上げた次第である。
ずっと逡巡していたのには理由がある。
この店、靴を脱いでつけ台に着くらしい。
これが引っ掛かった。

靴を脱ぐ鮨屋はほとんど記憶にない。
すぐに思い浮かぶのは
浅草ビューホテル脇の「すし游」くらいのものである。
お座敷天ぷらはよくあるけれど、
お座敷鮨ってのは何だかダサい気がしないでもない。

でも行った。
店の名は「寿し処 寿々」。
「すしどころ すず」と読む。
靴を脱ぐのは覚悟のうえでも、つけ台に座るときが厄介。
椅子の代わりに座布団を引き、
隣りに気を使いながら両足を滑り込ませるのだが
身体の固い御仁、それも平均体重を大幅に上回る御仁は
うしろにゴロンとひっくり返らぬように要注意。
先斗町の御茶屋ならまだしも、
鮨屋でこのスタイルはけっして粋とは言えない。

さっそくアサヒの生を小さなグラスで2杯。
身体の冷える冬場はともかく、
熱い夏にこのサイズでは飲んだ気がしないはずだ。
ビールのあとは鹿児島の芋焼酎・富乃宝山。
ロックで4~5杯は傾けたろうか。
この手の店では量が少ないからグラスがすぐ空になる。
いかん、いかん、なんだかイチャモンばかりつけている。

つまみは

北海道産の大ぶりな白魚 
皮はぎ刺し w/肝醤油
かつお刺し w/にんにく醤油

3点すべてが二重丸であった。
ダメ元でかつおには生にんにくのスライスを
お願いしてみたがやはりダメ。
「にんにくがお好きなんですね」―そうつぶやいた親方が
にんにく醤油を添えてくれたのには深く感謝。

にぎりに移行して

平目・*キス昆布〆・小肌・生とり貝・
〆さば・煮はまぐり・焼き穴子・煮穴子・
*赤身づけ・*玉子

以上10カンのうち、*ジルシが特筆モノである。
肉厚で弾力に長けたキスがよい。
キメこまやかなテクスチャーを持つ赤身がよい。
「文明堂」も真っ青のカステラ状玉子がよい。

玉子は出汁巻きではなく、
すり身入りのカステラタイプに如くはない。
これで甘口の日本酒を上燗で飲ったら最高だ。
3時のおやつは「文明堂」だが
7時のつまみはお鮨屋だろう。

会計は2人で2万と6千円也。
CPはきわめて高いものがある。
いろいろ苦言を呈したけれど、、
また靴を脱ぎに行きたい気分であります。

「寿し処 寿々」
 東京都港区赤坂2-9-4
 03-3586-1010