小津安二郎の映画は相当数観ている。
ただし、タイトル、ストーリー、キャスティング、
いずれも似通った作品が多いため、
アレ? あのシーンはいったいどの映画だったっけ?
思い浮かべるたびに、こんな症状に見舞われてしまう。
彼が自分のスタイルを確立したのは
巷間伝わるように1949年の「晩春」以降であろう。
小津の作品中、どれか1本と問われると、
間髪置かずに「東京暮色」と応えている。
封切られたのは1957年4月30日。
スカイツリーどころか、東京タワーすら完成していない。
長嶋茂雄はまだ神宮球場の六大学だし、
正田美智子さまもまだ宮城入りを果たしていない。
もっとも皇太子妃殿下が住まうのは
皇居ではなく赤坂御所のほうだ。
ところでなぜ「東京暮色」が好きなんだろう。
映画でん、食べものでん、好きなものは好き、
取り立てた理由など用意せずとも構わぬが
気になるので連休中に観直し、分析してみた。
浮かび上がった理由を
大小、重軽にこだわりなく列挙する。
① 小津映画としては異色、独特の暗さが全編を支配している
② 大好きな有馬稲子が主役の一翼を担っている
③ 日本酒を飲むシーンが多く、観ていて酒が飲みたくなる
④ 小料理屋・うなぎ屋・中華屋・鮨屋、なじみの店が目白押し
⑤ 狂言回しとして唯一の明るいキャラ、杉村春子が効果的
⑥ 常に良き父親の笠智衆が悲しい過去を背負っている
⑦ 田中春男と須賀不二男、二人の脇役がそれぞれに抜の群
⑧ 雀荘を営む夫婦、中村伸郎と山田五十鈴の呼吸が絶の妙
⑨ 小料理屋「小松」の女将・浦辺粂子が的矢の牡蠣を自慢する
といったところであろうか。
⑨番は蛇足で、単にJ.C.も的矢の牡蠣に目がないだけ。
小津自身も若い頃を過ごした三重の地には
ひとかたならぬ愛着を持っていたことが偲ばれる。
しかし半世紀以上も前から
的矢の牡蠣が東京に運ばれていたのにはびっくり。
こうしてみると小津映画の不動のヒロイン、
原節子だけがちょいとばかり、はてなマーク。
この作品に彼女は不要、使ってほしくなかった。
さすればよりいっそう異色感が際立ったのに・・・。
黒澤映画でおなじみの藤原釜足が店主に扮する、
「珍々軒」の立て看板に目が釘付けになった。
有馬稲子の行きつけの、しがない町の中華屋である。
昭和32年当時の物価が計り知れるので一部を紹介しよう。
ワンタン・・45円 中華そば・・50円
チャンポン・・70円 もやしそば・・80円
叉焼麺・・80円 揚げ焼きそば・・100円
五目そば・・100円 シューマイライス・・80円
なぜか炒飯が見当たらない。
もやしそばがチャンポンより高く、
叉焼麺と同値というのもヘンだ。
うなぎと中華が大好きな小津は
たびたび銀幕にも好物を登場させている。
熱烈に観たくなるというのではないけれど、
たまに観たくなるのが小津作品の不可思議な魅力である。
ただし、タイトル、ストーリー、キャスティング、
いずれも似通った作品が多いため、
アレ? あのシーンはいったいどの映画だったっけ?
思い浮かべるたびに、こんな症状に見舞われてしまう。
彼が自分のスタイルを確立したのは
巷間伝わるように1949年の「晩春」以降であろう。
小津の作品中、どれか1本と問われると、
間髪置かずに「東京暮色」と応えている。
封切られたのは1957年4月30日。
スカイツリーどころか、東京タワーすら完成していない。
長嶋茂雄はまだ神宮球場の六大学だし、
正田美智子さまもまだ宮城入りを果たしていない。
もっとも皇太子妃殿下が住まうのは
皇居ではなく赤坂御所のほうだ。
ところでなぜ「東京暮色」が好きなんだろう。
映画でん、食べものでん、好きなものは好き、
取り立てた理由など用意せずとも構わぬが
気になるので連休中に観直し、分析してみた。
浮かび上がった理由を
大小、重軽にこだわりなく列挙する。
① 小津映画としては異色、独特の暗さが全編を支配している
② 大好きな有馬稲子が主役の一翼を担っている
③ 日本酒を飲むシーンが多く、観ていて酒が飲みたくなる
④ 小料理屋・うなぎ屋・中華屋・鮨屋、なじみの店が目白押し
⑤ 狂言回しとして唯一の明るいキャラ、杉村春子が効果的
⑥ 常に良き父親の笠智衆が悲しい過去を背負っている
⑦ 田中春男と須賀不二男、二人の脇役がそれぞれに抜の群
⑧ 雀荘を営む夫婦、中村伸郎と山田五十鈴の呼吸が絶の妙
⑨ 小料理屋「小松」の女将・浦辺粂子が的矢の牡蠣を自慢する
といったところであろうか。
⑨番は蛇足で、単にJ.C.も的矢の牡蠣に目がないだけ。
小津自身も若い頃を過ごした三重の地には
ひとかたならぬ愛着を持っていたことが偲ばれる。
しかし半世紀以上も前から
的矢の牡蠣が東京に運ばれていたのにはびっくり。
こうしてみると小津映画の不動のヒロイン、
原節子だけがちょいとばかり、はてなマーク。
この作品に彼女は不要、使ってほしくなかった。
さすればよりいっそう異色感が際立ったのに・・・。
黒澤映画でおなじみの藤原釜足が店主に扮する、
「珍々軒」の立て看板に目が釘付けになった。
有馬稲子の行きつけの、しがない町の中華屋である。
昭和32年当時の物価が計り知れるので一部を紹介しよう。
ワンタン・・45円 中華そば・・50円
チャンポン・・70円 もやしそば・・80円
叉焼麺・・80円 揚げ焼きそば・・100円
五目そば・・100円 シューマイライス・・80円
なぜか炒飯が見当たらない。
もやしそばがチャンポンより高く、
叉焼麺と同値というのもヘンだ。
うなぎと中華が大好きな小津は
たびたび銀幕にも好物を登場させている。
熱烈に観たくなるというのではないけれど、
たまに観たくなるのが小津作品の不可思議な魅力である。