2011年5月27日金曜日

第62話 野方で明暗分かれるの巻 (その2)

中野区・野方に来ている。
「秋元屋」で焼きとん&焼き鳥をつまんだあと、
その名も「野方食堂」に向かうところだ。

最近、ときどき晩酌につき合ってもらう人間が
某出版社勤務のM山クン。
別段、酒は強くはないが晩めしは毎晩食べるわけで
「オゴッてやるよ」の一言が殺し文句。
身体さえ空いていれば、
大概の場所にはたとえ遅れても必ず現れてくれる。
まことに使い勝手のよろしいヤツにつき、
こちとらは大助かりである。

実はこの日も「秋元屋」に寄り道を決めた時点で
即、メールを送っておいた。
「秋元屋」における独り酒は
彼が到着するまでの時間調整も兼ねていたのだ。

さっそく「野方食堂」ではビールと赤ウインナー。

下世話なコレが好き

いったい何時の頃からだったか、
粗挽きウインナーが幅をきかせるようになったのは。
おそらく1980年代初めじゃなかったろうか、となれば早や30年。
そのワリを食ったのが懐かしの赤ウインナーなのだ。

現在、豚肉100%の細挽き赤ウインナーをゲットすることは
ほぼ不可能に近い。
したがって豚肉・鶏肉混交で我慢の日々を送らざるをえない。
さすがに魚肉入りはトンと見掛けなくなった。

ほどなくM山クンが登場。
この人はいつも疲れているのが身体的特徴。
いや、疲労の原因は精神的なものかもしれない。
コップ1杯のビールで顔を赤らめながら
注文したのは季節の御膳、金980円也。
料理4品にごはん・味噌汁・新香が付き、
バランスの取れた定食仕立てだ。
こちらも絹揚げ豆腐を追加する。

運ばれた御膳はこんな風であった。

どんぐりの背比べだが目立つのはかつお造り

筑前煮と蕗煮、煮物の重複は感心しない。
バッテラみたいのは春キャベツと豚肉の博多押しというらしい。
写真入りのメニューにはこうあった。
”絶妙な塩コショウの塩梅!まずはそのままお召し上がりください”
ところが、ところがである。
その博多押しの塩辛いこと、口元ひん曲がるが如し。
オマケにかつおも筑前煮もまったく冴えない。

卓上にはメニュー類に混じり、いろいろと能書きが。
”美味しさのヒミツ”と題し、米・味噌・醤油・酒をはじめ、
各種食材の自慢話がこれでもかと満載である。
どんな材料を使用しようとも、
料理人の舌がお粗末ではまさに猫に小判。
これでは昭和11年創業の金看板が泣く。
料理の世界で生きる者は
腕よりもまず、舌を磨かなくてはなりませぬ。

はるばる野方までやって来て
「秋元屋」と「野方食堂」、2軒の店を訪問したが
モロに明暗分かれるの巻であった。

「野方食堂」
 東京都中野区野方5-30-1
 0303338-7740