2011年5月2日月曜日

第43話 白金 四の橋 主菜はウズラ (その1)

ウズラには目がないズラ・・・。

街でフレンチや焼き鳥屋を見かけると、
メニューにウズラの料理を探すのさ、
あなた(あるホテルのシェフ)に教わってから・・・。

 ♪ 街でベージュのコートを見かけると
      指にルビーのリングを探すののさ
                あなたを失ってから ♪

ちょうど30年前のレコ大受賞曲みたいなもんで
ウズラを見かけたら最後、
ほとんどちゅうちょなく注文してしまう。
ハトやキジやシギやヤマウズラ、
はてはイワジャコなんかも好きだが
一番はウズラかもしれない。

敬愛する高峰デコちゃんの大好物であったがため、
彼女の結婚披露宴でもふるまわれたウズラのフォワグラ詰めは
先ごろ銀座の「ル・シズィエム・サンス」で堪能した。
今度はフォワグラこそ詰まっていないものの、
フランスはドンブ産の上等なウズラのロティ(ロースト)に
白金は四の橋で出食わした。

下町ックな商店街に異彩を放つフレンチビストロは
界隈で知らぬ人とてない「ラビラント」。
店名はフランス語で”迷宮”の意味だから
ここに入店することを”迷宮入り”と言う、
かどうかは保証の限りではない。

当夜は此度の大震災に襲われた宮城県・登米市から
震災後初めて上京してきたN堂女史を
励まそうと企画された夕食会だった。
宮城の中心都市、杜の都・仙台では
和食はともかくも本格的なフレンチやイタリアンは
いまだ復旧の途にあるそうで
なかなか口に入らないとのこと。
彼女のリクエストもフレンチであったのだ。

「ラビラント」はアラカルト・メニューにこだわり続ける店。
多種多彩な料理の数々が大きな魅力となっている。
近所の人気店「ラ・シェット・ブランシュ」の料理が
ホンの数皿に絞り込まれているのとは実に対照的である。
客にとってどちらがよいのか、あらためて指摘するまでもない。
ちなみに「ラ・シェット・ブランシュ」の向かいには
その名も「うずら」なる和食店がある。
ただし主として鯨肉を扱い、ウズラは見たことがない。

集結したのは総勢5名。
シャンパーニュ派2名、生ビール派3名に分かれ、
主賓の無事を祝ってグラスを合わせた。
そうしておいて各自、メニューの吟味に没頭する。
これは迷いますよ。
本当に迷路に迷い込んだが如くですよ。
もしも自分に胃袋が3つあったなら、
なんて突飛な発想が浮かんでくる始末。
はて、どうしたものでござろう。

=つづく=