2011年5月17日火曜日

第54話 ウズラに驚いたズラ (その1)

ウズラは当ブログにたびたび登場する食材。
好物だから当然といえば当然だ。
去年の秋、埼玉の春日部で変わったウズラ物に遭遇した。
ほとんど未知との遭遇に近い。

春日部にはときどきおジャマしている。
以前、コラム「食べる歓び」を綴っていた頃からの読者で
ごく自然に飲み友となったH社長が経営するお茶屋さん、
「おづつみ園」に年に二度ほど遠征するのだ。

中学の同級生でハーピストの I 﨑サンが
「おづつみ園」主催のミニコンサートに出演するため、
毎度、その進行係として一役買うことになっている。
演奏終了後は近所の居酒屋や焼肉屋で打上げる。
中でも気に入りの店が「福島や」という焼きとん屋。
焼き鳥より焼きとんをこのむタチ、さもありなん。

江戸末期には屋台の食いものだった鮨や天ぷらが
いつの間にやら高級化して、
それに右へならえしたものか、
焼き鳥までけっこうな値段を取る店が急増した。
やだねェ、いけませんよォ、やるせないなァ。

その点、焼きとんは庶民を裏切らない。
さみしいフトコロを痛めつけたりはしない。
昔からずっと安値安定、鶏卵と並んで
物価の優等生であり続けている。
特に内臓、いわゆるホルモンは
”放るモン”と称されるくらいだから
よっぽど仕入れ値が安いものとみえる。

ライオンだってヒョウだって
たおした獲物はまず内臓から食い始める。
一番旨い部位のありがたみを
まだ人間はじゅうぶんに理解していないようだ。
人類は真の肉食動物たりえず、ということだろう。

おっと、今日の主役はウズラであった。
ウズラはウズラでも「福島や」においては肉ではなく玉子。
焼き鳥屋ならウズラの玉子にありつけるから
べつに珍しくもなんともないと思われるだろうが
ここのウズ玉は驚くなかれ、殻付きで登場する。
しかも殻をむかずに殻ごと食べちゃうのだ。
まさに未知との遭遇であった。

昨秋、初めてお目に掛かって目からウロコ。
たまたまその夜はデジカメ不携帯で
せっかくの珍品を撮ることあたわず、ほぞを咬むことに。
そこで此度はH社長にリクエストして
打上げの会場を再び「福島や」に設定してもらった次第だ。

ところが・・・。

=つづく=