2011年5月30日月曜日

第63話 豚肉の新生姜焼き 男やもめのキッチン Vol.2

今日は”男やもめのキッチン”シリーズ第2回。
誰にも料理を作ってもらえない哀れな男が自ら厨房に入り、
手抜きをきわめながらも
それなりの美味にありつこうというものだ。

俗に物事をいじり壊すという言い回しがあるが
料理とて同じこと。
手を掛けすぎて台無しにしちまうことがままある。
殊に料理本と首っ引きで
塩や砂糖を几帳面に量って使う主婦に
そんな例があとを絶たない。

その点、男やもめは気楽なもの。
誰に食わせるわけじゃなし、
もともと手を掛けないから失敗しても悔いは残らず、
精神的打撃も軽微なもので済む。
駄目もとOK、けっこう毛だらけ、猫灰だらけなのである。

日々気温が上がり、新生姜の出回る季節となった。
今回はこいつを使ってみたい。
定食屋の定番に豚肉の生姜焼きがあるが
これを新生姜で作るのだ。
ただし、生姜は卸さない。

ところで豚肉生姜焼きの発祥地をご存知だろうか?
銀座7丁目の和食店、「銭形」で生まれたものとされている。
昭和26年創業というから今年で還暦。
生姜焼きが生まれたのはもっとあとのことだろうが
今も変わらず提供している。
その流れを汲む日本橋小網町「銭形」でも同様に食べられる。

それでは豚肉の新生姜焼きを作って参りましょう(2人前)。

用意する食材は
   豚バラ肉薄切り・・・300g
 新生姜・・・100g
 信州味噌(白)・・・適宜
 日本酒・・・適宜


豚肉はバラでもロースでもかまわないがJ.C.の好みはバラ。
しかもバラだと油を引かずに済む。
豚肉にはあらかじめ軽く塩・胡椒をほどこしておく。

新生姜は鮨屋の漬け生姜よりやや厚めにスライス。
このとき繊維を切断せず、繊維に沿って包丁を入れるのがコツ。

あらかじめ味噌を日本酒で溶いておくが目分量で同量くらい。
好みで若干の醤油を加えてもよし。
通常の生姜焼きは醤油味が基本ながら
新生姜の場合は断然、味噌との相性が勝る。
谷中生姜に添えるのは味噌と昔から相場が決まっている。

豚肉が焦げ付くようであれば、少量の食用油をフライパンに落とす。
ラードがベストであることは言うまでもない。
手早く炒めたら火の止め際に溶いた味噌を掛け回して完了。
アルコールが苦手の向きは投入の時期を早める。
きざみねぎ・七味唐辛子・辣油(ラーユ)の類いは使わぬほうがよい。
新生姜特有の香りと辛味を堪能するためだ。
まっこと簡単な料理なりけり。