2011年5月24日火曜日

第59話 板橋宿は今 (その3)

九州北部の福岡・大分県あたりでは
両面焼きそばなる代物がポピュラーらしい。
首都圏では数年前に「あぺたいと」という店がお目見えした。
板橋北部、埼玉県との県境の高島平本店のほか、
江戸川区・鹿骨や埼玉県・戸田市にも展開している。

両面焼きを試すため、その夜は板橋支店にいた。
つまみに頼んだ3種盛りが今ひとつで盛り上がらない。
品書きと実物との差異を根に持ったわけではないが
ちょいとおざなりで退屈な3種盛りだった。

しばらくして運ばれた両面焼きそばと初めての対面。



見た目はごくフツーのやわらかい焼きそば

量的に小・中・大・ビッグ・ばくはつの5段階あって
値段は590円から1270円と幅がある。
小を頼んで食してみると、確かに硬めに炒められているものの、
別段、これといった特徴があるものではなかった。
まあ、ハナシの種に一度は食しておいてもよいという程度だ。

早々に次の店に回った。
こちらはしかと目星をつけておいた居酒屋「政屋」。
ウリモノはおでんである。
女将は日中、鮮魚店で働いているらしいが
仕込みもあるのに、そんなことが可能なものだろうか。

以前は都営三田線・新板橋駅近くにあり、
立ち退きか何かでこの冬、移転して来たばかり。
もっとも徒歩で1~2分の距離だから
なじみ客を失う懸念はまったくなかった。
最初に立ち呑みで開業したのは1978年のことだそうだ。

テーブル席があるにはあるが、常連はみなカウンターに落ち着く。
女将との会話ナシでは飲みに来た意味がないと言わんばかりだ。
傑出した器量や話術の持ち主ではないものの、
妙に心休まる雰囲気を持ったオバちゃんである。

湯気を立てている鍋のおでんをのぞき込み、
好みの種を選ぶシステムは3品でたったの380円。
比べるのも狭量ながら、銀座のおでん屋で飲むのがばからしくなる。



大根・しらたき・じゃが芋をチョイス

しらたき以外はめったに頼まぬ種だ。
皿を見ていて思った、ハハハ、根菜ばかりじゃないか。

もう一つの人気アイテム、焼き鳥も所望する。



大ぶりの串3本でこれまた380円

もも肉のぶつ切りが滋味たっぷり。
焼け焦げの香ばしさも手伝ってなかなか旨い。
神保町の気に入り店「多幸八」のそれに似たタレもけっこう。
これはおでん以上の必注品ですナ。

当夜は女将の孫娘が手伝いに来ていた。
しばらくするとお腹がへったのか、賄いのお時間。
「何食べたいの?」―女将に訊かれて
「厚揚げ焼き!」―こう応える。
ほう、てっきり焼き鳥や焼肉(メニューにあったかな?)かと思ったら
今の若い娘にしてはずいぶん枯れたモンを食いたがるじゃないの。
サッポロの赤星ラガーを飲りながら、つい、便乗してしまう。
1枚焼くのも2枚焼くのも手間ひまァ一緒だし、
節電ならぬ、節ガスにちょいとばかり協力してみました。

「あぺたいと 板橋店」
 東京都板橋区板橋1-45-6
 03-3579-4200

「政屋」
 東京都板橋区板橋1-48-2
 03-3964-8094