2011年6月7日火曜日

第69話 観音裏に鐘が鳴る (その2)

フレンチ好きの大食漢、
友里亀とその友人のS藤サンとともに
観音裏の「オマージュ」に来ている。
乾杯を済ませ、メニューとにらめっこの真っ最中。
おっとその前にワイン選びである。
1本目は造り手を失念したが
シャサーニュ・モンラッシェ’00年。
そしてニュイ・サン・ジョルジュの1級畑・シェニョ’98年。
これはジェラール・ムニェレの手になるものだ。

結果を先に述べれば、
ともにブルゴーニュ産ピノ・ノワールの特性がクッキリ。
鼻腔に抜けるブーケかぐわしく、舌ざわりなめらかにして
のど越しも爽快、値付けが1万円と1万4千円では
ほほが緩むのも当然であろう。

2本とも赤にしたのはハートランド小瓶のあと、
彼らはシャルドネのグラスワインを
J.C.は小瓶のお替わりをしたからだ。

われわれ3人が選んだ料理はかくの如し。
 前菜
  S藤・・・トルコ産モリーユ(編笠茸)のフリカッセ
   友里・・・鴨フォワグラのショー・フロワ
  J.C.・・・ドンブ産グルヌイユ(カエル)のペルシャード
 主菜
  S藤・・・サウスダウン種仔羊のロティ
   友里・・・ドンブ産ウズラのパエリャ仕立て
  J.C.・・・      〃

すかさず登場したアミューズは
仏産プティ・ポワ(えんどう豆)のヴルーテ。
ヴルーテはビロードのことで濃厚なスープとでも申しましょうか。
モロッコ王室御用達のアルガンオイルがあしらわれている。

そしてもう一つ、和歌山産月日貝という珍しい貝。
タルタル仕立てを3人で少しずつシェアした。
見た目は帆立によく似た貝の食感は
帆立と平貝の中間といった感じ。
メキシコ風のワカモーレ(アヴォカドサラダ)が添えられる。
料理をおすそ分けし合ったが前菜に特筆モノはない。
もちろん浅草随一のフレンチのこと、水準はきわめて高い。

そのあとの主菜が見事であった。
ウズラのパエリャはスペイン人もビックリのデキ。
仔羊はその上をいったのだからたまらない。
サウスダウン種は脚の短い、
言わばダックスフンドみたいな羊で北海道は足寄の産。

プティ・フールだけにデセールをとどめ、
彼らはカフェ、当方は振り出しに戻り、ハートランドを三たび。
期待に背くことなく「オマージュ」は移転後も健在であった。
「素人のど自慢」よろしく頭の中では
 ♪ カンカンカンカンカーン ♪
合格の鐘が打ち鳴らされたのでありました。

「オマージュ」
 東京都台東区浅草4-10-5
 03-3874-1552