2011年6月1日水曜日

第65話 「ゆうひ」の鮨に 友と行く (その2)

地番は田端だが最寄りは駒込の「ゆうひ鮨」。
サッポロの生から瓶に切り替えたところで
にぎりの第一弾が目の前に置かれた。
おやっ? ずいぶん小ぶりになったもんだ、これが第一感。

すし種は小肌であった。
新子より成長していてもこれまた小ぶり。
1尾を半身2枚付けにしてにぎられている。
サイズも意外ながら、もっと驚いたのは酢めしのほうだ。
かなり色黒に日焼けしているではないか。
海辺に小麦色の肌をさらす、
ビキニスタイルのお嬢さんならまだしも
浅黒い酢めしってのはあまり気持ちのよいものではない。
一見して酒粕が原料の赤酢だと知れるが
それにしても・・・なのである。

酸味にコク味が重なり、舌は喜んでいる。
とは言っても見た目は人間だけでなく、鮨にもまた大切。
親方自身もそこを気にして
以前のミツカン酢に戻そうかと思案中らしい。
味はいいんだけどねェ・・・。

お次はキスが来た。
皮目を除き、軽く〆ておぼろをカマせてある。
これがスマッシュ・ヒット。
この店は、というより、この親方は繊細な江戸前シゴトが得意だ。
キスを扱う鮨屋はほぼ間違いなく当たり。
下町の優良店でキスを見つけたら指パッチン必至となる。
ところが銀座や麻布の高級店となると、
一人アタマ24000円は軽く取られてしまう。
これを24000のキスという。
何のこっちゃい? ってか?
オールドファンなら覚えておられよう。
アドリアーノ・チェレンターノのカンツォーネを
藤木孝がカバーした「24000のキッス」。
ハイ、すんません、お粗末さま。

真鯛昆布〆のにぎりのあとは漬け生姜で口中のリフレッシュ。
こちらは普通の米酢で漬けてあるから色白だ。
この頃には宮崎の芋焼酎、大地の夢のロックに移行している。

つまみに戻り、まずはタコと肝付き蒸しあわび。
甲乙つけがたいが、あえてタコに軍配。
よくもこうまで柔らかく仕上げるものだ。
それでいて歯応えの最後の一線はキッチリ残している。
粗塩とスダチがピタリと寄り添った。
ニンニクがないのは残念ながら上りかつおもなかなか。
大ぶりの穴子は塩焼きにしてカボスを搾る。

再びにぎりへ。
赤身づけ・大とろ、そして甘めの玉子でおまかせはお終い。
小肌をアンコールしたら、締めはかんぴょう巻だ。
傍らの友も大満足の様子。
むろんこちらに異論のあるはずもない。
かくして「ゆうひ鮨」の夜は更けていったのでした。

「ゆうひ鮨」
 東京都北区田端3-6-9
 03-3827-0478